| ● リコー杯1999 組み合わせ決定 ● |
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リコー杯プロ棋士ペア囲碁選手権1999の組み合わせ抽選会は10月27日、東京・飯田橋のホテルエドモントで開かれた。毎年、華のある抽選会として、出場棋士が楽しみにする、ちょっとしたイベントになりつつある。 五回目を迎えた今回、司会にマイケル・レドモンド八段が起用された。司会といえば白江治彦七段らベテランの顔が何人か浮かぶ。しかし事務局によると、新しい人材を育てる意味もあるのだとか。日本語の微妙なニュアンスをそのまま理解して、独特のユーモアで切り返しができる唯一の米国棋士だ。うまくいけば、意外な才能が花開くかもしれない。 |
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もっとも、初の体験で緊張気味のレドモンド八段。「囲碁界のオールスターゲームにふさわしい大会」と口火を切ったが、どことなくぎこちない司会ぶりが会場を和ませる。 吉国一郎・日本ペア囲碁協会会長、浜田広・リコー代表取締役会長のあいさつのあと、さっそく組み合わせの抽選に入った。 出場者は16組32人。タイトル保持者や勝率上位者で選ばれた精鋭ばかりで、この日は半数以上の棋士が顔をそろえた。ある男性棋士は「せっかくのペアだから、自分の手で相手を決めたい」と出席した理由を話す。実はこの抽選会、想像以上にプレッシャーのかかるくじ引きなのだ。 抽選方法は、AからPまで書かれたボールを2組用意し、女性用・男性用の箱にそれぞれ入れる。出場者が自分でボールを取り、枠に名前を書き込んでいく。欠席者は、吉国会長や浜田会長ら関係者が代理で引くことになった。ボールを引いて、まだ相手の決まってないHの枠に入った小林泉美女流棋聖は、席に戻るやいなや、「この抽選、緊張するんですよね」と小声で漏らす。「そうなのよ。こんなに緊張する抽選はほかにはないわね」と相槌を入れたのは小林千寿五段だった。 |
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ペア囲碁は、パートナーの息が合うことは必要だが、女性棋士がのびのび打てるかどうかも、意外に大きな要因なのだ。男性陣はそれこそ囲碁界の超一流どころ。彼らの息づかいや動作の一つひとつが、パートナーの女性にとても気になる。だから、できるだけ相性がよく、「どんな手を打っても笑って許してくれる男性棋士」とペアを組むのは、まず最初のハードルと言ってもいい。 ところで、小林泉美女流棋聖のHの枠。光一九段の代理がHのボールを引くと、会場は 一瞬どよめいた。「えっ、(相手は)お父さん?私電話してくる」と泉美女流棋聖が公衆電話に走った姿が何とも微笑ましい。それを見た大竹英雄九段、「なんだい、もう優勝したような顔してるよ。きょうで大会が終わっちゃったみたいだね」と周囲を笑わせた。 次々とペアが誕生し、大竹九段の予想を聞いた。「すごい組み合わせが出来ましたね。まあ優勝候補は前年の優勝ペア(青木喜久代七段・本田邦久九段)でしょう。対抗とすれば小林親子ペアでしょうか。相当の穴ですが、小西和子六段・加藤正夫九段のペアもいいとろに行く可能性あり。もっとも、一番の期待と言えば杉内寿子八段・結城聡九段のペアでしょう。杉内・結城ペアが決勝まで残れば、囲碁ファンは100万人増える」 初出場の杉内八段がだれとペアを組むかは抽選会の見どころの一つだったが、山田規三生七段と並んで最年少の結城九段がパートナーになったのは、運命的なものか。抽選の途中で一回だけ拍手が響いたのも、このペア誕生の瞬間だった。 さて、最後は一回戦の枠にどのペアが入るかの抽選に移り、次々と好カードが組まれる。それぞれのペアの胸の内は果して……。 |
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−小西和子六段・加藤正夫九段− |
加藤九段
「小西さんは(橋本昌二九段と)第一回のとき優勝してますよね。私はそのとき2連敗。ところが年々成績が良くなって、次は1勝1敗、昨年は決勝に進みました」 小西六段 「私のほうは成績が悪くて。昌二先生以外の方と組んで勝ったことがないんです。加藤先生ゴメンナサイ」 加藤九段 「それは組んだ相手が悪い。今度はボクとだから優勝でしょう」 |
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−梅沢由香里二段・工藤紀夫天元− |
梅沢二段
「ペア戦は成績がいい。昨年は準決勝まで行きましたから、今年は一歩進んで決勝まで。何でも許してくれそうな工藤先生で良かった」 工藤天元 「前に1回出たことがありまして、その時は青木(喜久代)さんとペアでした。青木さんが昨年優勝してるということは、(前に負けたのは)私の責任ということですよね。梅沢さんに申し訳ないんだけど、私の場合ベストドレッサー賞はとても無理だから、優勝するしかありません」 |
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−岡田結美子四段・山田規三生七段− |
山田七段
「ペア戦は初めてなんです。一回戦勝てればいいですね。どうでしょうか岡田さん」 岡田四段 「実はペア碁研究会を作って研究はしていたんですが、成績に出るかどうか。何せ対戦相手が前回優勝ペアです。一回戦を勝てれば何とか……」 |
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それぞれの思いを胸に12月12日、リコー杯は開幕する。 |
| 取材 横内 猛 |