リコー杯プロ棋士ペア囲碁選手権
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■リコー杯2000 組み合わせ決定

リコー杯プロ棋士ペア囲碁選手権2000の組み合わせ抽選会が10月26日、東京・千代田区のホテルニューオータニで行われた。
リコー杯も今年で第6回を迎え、この時期のイベントとして、すっかり定着した。「年が明けたら棋聖戦、十段戦と共に春が来て、桜の散る頃富士通杯……」といった流れのプロ碁界で、「半袖が片付いたら抽選会、マフラーを出したら一回戦」といった存在か。
タイトル・賞金ランキング・勝ち星などの基準から選定された男女各16名、計32名によるオールスターペアマッチ。顔ぶれが豪華すぎる故、このメンバーの日程調整は困難を極める。対局日程に関しては折り合っているが、間を置いた前夜祭とも言えるこの日の抽選会には、他棋戦の対局やその他の都合により参加できなかった選手が多かった。それでも男性棋士5名、女流棋士7名の、計12名の選手が抽選会場に足を運んだ。
鷹西美佳・日本テレビアナウンサーの司会で抽選会は開会した。
吉國一郎・日本ペア囲碁協会会長の挨拶、浜田広・(株)リコー代表取締役会長の挨拶・乾杯のあと、しばしお食事タイム。その間に準備が整い、お待ちかねの組み合わせ抽選に入った。
この大会には、前回の優勝ペアは引き続きペアを組むというルールがあるが、2年連続優勝すると自動的にペアが解消されるというルールもあり、青木喜久代女流名人・本田邦久九段ペアは今回はお別れ。32名全員による抽選となった。
この抽選会、予想以上の緊張感がある。ペア囲碁はアマチュアにとっては「勝った喜びは2倍、負けた惜しさは半分」というゲームだが、こちらはプロ。盤を前にするとそういう気分にもなれないらしい。特にペアを組んだパートナーとの呼吸が合わない時は、敵が3人いるように思えるそうだ。
女流棋士の場合、パートナーに迷惑をかけまいとするあまり腕が縮むことがあり、それがかえってパートナーをシビレさせるというケースも多いようだ。いい意味で「好き勝手」させてくれるパートナーと組めればベスト。この抽選の結果が優勝の行方を大きく左右すると言っても過言ではない。ペアが決まる前の棋士たちの心境は、ドラフトで複数球団に指名された野球選手のそれに近いだろう。
ドラフトにも目玉があるように、この抽選会にもいくつかの注目点があった。その中の一つが、小林光一十段・天元・碁聖と小林泉美女流棋聖の親子が、どういうペアになるのか。前回は15分の1の確率を引き当てて親子ペアとなったが、今回はどうなのか。確率から考えるとペアを組むよりも親子対決を見られる率の方が高い。こちらも見てみたいものなのだが……。
抽選の結果、親子の絆は確率という名の高いハードルを軽く飛び越えた。前回15分の1、今回16分の1、計240分の1という奇跡のような確率で2年連続でペアを組むことになった。この瞬間、小林十段は「エーッ」と驚きの声を上げ椅子から5cmほど飛び上がったかに見えた。そして嬉しそうに「こんなこともあるもんなんだねー」とテレ笑い。場内もどよめいていた。親子というインパクトがあまりにも強かったせいか、知念かおり女流本因坊・林海峯九段ペア(林九段は揚嘉源八段・知念女流本因坊夫妻の仲人)が同じ条件をクリアしていることに誰も気付かない。結局林九段の口からこのことが明かされ、場内は「そういえばそうだね」という感じで、またざわついた。
全てのペアが決まり、恒例となった大竹英雄九段の予想。
「小林親子は別格。だけどタイトルをいっぱい持ってるから、今回は遠慮するだろうという読みでパス。本命は祷陽子四段・王立誠王座ペア。対抗は知念・林ペア。ほかもみんないい勝負で、面白い戦いが期待できるでしょう。ウチはベストドレッサー賞を頂ければと思っています」
選手たちはどう思っているのだろうか。声を拾ってみた。
武宮正樹九段「はっきり言ってウチは強い。優勝間違いなし。ボクと大沢さんが組めば、相手にならない。だが、強過ぎて困る面が出てくるかもしれないけど……。ねえ、大沢さん」
大沢奈留美女流鶴聖「ハ、ハイ。頑張ります」
梅沢由香里三段「片岡先生は優しそうだから、うまくやれそうな気がします。以前、片岡先生が姉弟子(小山滿鶴五段)と組んだ時に、姉弟子がやりやすかったと言っていて、棋風が似ていると言われる私もやりやすいのではないかな、と」
小山滿鶴五段「依田先生は名人戦で負けて怒ってると思うので、ウサを晴らしてあげたいと思います」
祷陽子四段「いつも大竹先生に名前を上げてもらうんですが、いつも初日で消えています。今回も立誠先生の足を引っ張ることは確実なので、引っ張り過ぎないことを目標に頑張ります」
小林光一十段・天元・碁聖「前回は泉美にツライ思いをさせたので、今回はそんなことのないようにしようと思います」
12月11日(土)、東京・目黒区の恵比寿ザ・ガーデンホールで華やかな戦いの幕が開かれる。
(取材:高 成謙)