リコー杯プロ棋士ペア囲碁選手権
report
■リコー杯 準々決勝・準決勝
「これは名局ですね」
解説の工藤紀夫九段に「ペア碁の名局」と言わしめる棋譜が出てきた。大沢・林ペアと小川・石田ペア(先番)の対戦。これは手数が長くなるが100手過ぎごろから、じっくりご鑑賞いただきたい。白が頑張って頑張って頑張り通した「半目勝ち」だった。
早々と右辺に確定地をつくる白は、当然周囲の白が薄くなる。「黒の攻めと白のシノギ」という構図がはっきりした。あちこちの白石がパンチを浴びつづけながらも、気持ち一つで踏みとどまる展開。終局図を見るとそのすさまじさがご理解いただけるだろう。白は5か所に切れている。これはヨセの段階で切れたものではなく、初めから別々の生きを強いられたものだ。常識でみれば、どこか死んでもおかしくない。対局コーナーも解説会場も、ほとんどのファンがその攻防にくぎ付けになった。
実は、中央の黒を一眼にする妙手があったらしい(武宮正樹九段の指摘)が、それは勝敗と無関係。とにかく強烈なパンチを浴びても浴びても倒れない驚異の二人三脚は、最後にファンの喝采を浴びた。
一方、楠・依田ペアと矢代・小林ペアの準決勝はじっくりした序盤、中盤だったが、解説の工藤九段がひとつ気になるところを指摘していた。下辺中央寄りで孤立しているかに見えた黒2子の存在だった。「私はこの黒の動き出しが気になるんですけど」と言うと、ほどなく楠七段が黒81と決行する。その瞬間、その周りの白が格好の攻撃目標になった。両ペア必死の攻防が続いたが、急所で白の足並みが乱れた。白114に対し黒115から虚を突いたように白を強襲し、中央右上の白数子を捕獲した。黒123を見て小林九段は無念の投了を告げた。