「20周年記念ペア碁大賞」エッセイ【ペア碁の思い出】

「20周年記念ペア碁大賞」エッセイ発表

トーマス・シャン (アメリカ)

初めてペア碁に遭遇したのは1991年、地元ニューヨークのロチェスターでのアメリカ・碁コングレスでした。そのコングレスはアメリカの碁で歴史的なイベントでした。私達、主催者は外部の後援者を確保し、北アメリカ・ING杯を始め、囲碁の備品を用意し、多くの強い選手を集めました。コングレスの理事、デーヴ・ウェイマーは奇抜な賞品を用意しましたが、その後の碁コングレスでもそのまま引き継がれています。

ペア碁大会は新しい呼び物となりました。その頃は小さなイベントで12ペアほどの参加しかありませんでした。しかし、聞いた事のないNKBという日本の会社から素晴らしい賞品を寄付していただき、それも多くの観戦者を魅了しました。ニューヨークのズィリ・ペンとペアを組んだアトランタの若いブロンドの女性、デビー・シーモンが優勝しました。彼らと一緒に目立っていたペア、カナダの学生のフィル・ウォルドロンとお母さんのジーンは大会で最も観衆からの興味を注がれていました。

碁コングレスの後、私達は新しい碁のバリエーションについて、情熱的に話し合いました。ブリッジのファンの間では、「ブリッジと結婚は混同できない」という格言を良く知っています。それに比べ、このペア碁は大好きな碁で男女のバランスをとるのに良いかもしれないと思いました。

あの夏以来、18年経過し、現在、世界アマチュアペア碁選手権大会の20周年を迎えます。ペア碁は多くの人々に受け入れられ、その記憶に浸透しています。世界中で行われる通常の大会は別として、ペア碁は唯一の男女混合の頭脳ゲームとして2008年に第一回世界マインド・スポーツゲームで注目され、メダルをかけたイベントとして2010年と2014年にはアジア大会が行われます。アメリカ碁コングレスでは、2つのペア碁大会を開催しています。ひとつは成人/青年ペア、もうひとつは自由な組み合わせのペア。ペア碁大会は一番大きな会場を占め、毎年、100ペア以上の参加があります。

もちろん、偶然ではありませんが、アメリカ碁コングレスでは一時期、ほとんど男性選手で占められていましたが、現在はかなり女性選手を見うけられるようになり、特に若い女性が多くなりました。私が抱いていたブリッジのような不安は見当違いで、ペア碁はアメリカやヨーロッパにたくさんのカップルを呼び集め、1組たりとも別れたカップルはいないそうです!

ペア碁はいつも私を裏切りません。ロチェスター・碁コングレスの1年後、私はクレバランドの聡明な若い女性、ジュディ・シュワブとペアを組み、アメリカ選手権を優勝し、第3回世界アマチュアペア碁選手権大会に出場しに東京に行きました。

そこで、ペア碁を発明した滝夫妻に初めてお会いしました。それは、彼らとの何度もの訪問と交流の始まりで、彼らとの交流は楽しく印象深いものでした。インターネット対局が普及するずいぶん前から滝久雄氏とは時々インターネットで碁を打っています。人生の哲学や抱負を語り合い、彼は慈善への貢献は基本的に人間に欠かせないものであり、充足した人生を実現する為に不可欠であると考えています。この信念のとおり、滝夫妻は情熱と誠意をもってペア碁の発展を支え、今日のペア碁があります。

1992年の大会は、ハンディ戦の1回戦でジュディと私はペアを組み、岡本信子と原田実と対戦。彼らはもちろん、世界で一番有名なアマチュアの選手です。(岡本さんは何年もアマチュアで日本の女性チャンピオンでした。原田さんは、よりたくさんのタイトルを持ち、2000年にはアマチュア8段になり、2008年には大倉賞を授与されました。)彼らは魅力的なペアでいつも温かく気取らない素晴らしい人です。しかし、対局が始まるとその上品さは一転、荒々しい戦闘態勢に変わります。私達は2石をハンディとしてもらい、ジュディは碁盤上でも時間的にも素晴らしい手を打ち、優勢に。その時、チャンピオンの炎を見た瞬間でした!私達には5,6分、彼らには1分も時間が残ってない時、彼らはすばやく数手を打ち、時計を押し、興奮しているかのように見つめ呼吸していました。最終的に私達が負けました。その後、岡本さんは大声で笑いながら楽しく素晴らしい対局だったと言ってくれました。それが、私達の長い友情の始まりでした。それ以来、日本での世界大会の対局があると岡本さんはいつも応援に駆けつけてくれます。

1996年、私はデビー・シーモンが私のパートナーであると確信しました。もう10年以上一緒に碁を打ち、3回アメリカ代表となり、たくさんの思い出を分かち合いました。あの若いカナダの少年、フィル・ウォルドロンは北アメリカの重要な選手へと成長しました。彼は母親のジーンとペアを組み、6回カナダを代表して世界大会に出場し、ハンディ戦でチャンピオンになりました!

全てのペア碁の記憶の中で、とても嬉しく思うのは、妻のジョイが囲碁に興味をもってくれた事で、それが私の人生にとってとても重要なことです。初めてのペア碁の対局で西条雅孝先生とペアを組んだ時まで、ジョイはそれまで囲碁になんの反応も示しませんでした。西条先生が彼女をとても楽しませたに違いありません。今では私とペアで対局するのを楽しみにしているのです。

何年も素晴らしい功績を残してきたペア碁。感謝と祝福の気持ちを込めて、心からこの感動的なゲームの末長い成功を願いたいと思います。

「20周年記念ペア碁大賞」エッセイ発表トップへ

home