「20周年記念ペア碁大賞」エッセイ【ペア碁の思い出】

「20周年記念ペア碁大賞」エッセイ発表

松本今代 (日本)

「六十の手習い」とひやかされながら習い始めた囲碁です。たいしたレベルアップは望むべくも無く、夫(五段)や息子(元東大囲碁部キャプテン)の対局をぼんやり観戦するのみでした。

ところが二十年前、ペア碁に出会い事態は一変。囲碁に関しては全く出番が無いはずのこの私が夫や息子と同じ土俵にあがることになろうとは!振り返れば楽しくも感慨深い思い出の数々です。

平成2年12月23日、「ペア碁って、どんな打ち方をするんだろう」と話し合いながら夫と二人、第1回国際囲碁アマチュア・ペアトーナメントハンデ戦に参加。そして、三位入賞。それ以来、ペア戦の虜となりました。

毎年夫と二人、ブロック選手権大会で涙を飲んだ後上京してハンデ戦に参加するのが恒例となり、15年間皆勤。夫が亡くなりバトンタッチした息子と三度目の参加を待ち望んでいる今日この頃です。

毎晩「11月15日まであと何日?待ち遠しいなあ」と電話して来る息子ですが、大会会場では、それは嬉しそうに「母です。」と紹介して廻ります。母子共に至福の一日です。

昨年、加戸守行愛媛県知事(六段)とペアで四国ブロック選手権大会に参加した日のことも忘れられない思い出の一つです。

知事にお会いした機会にペア戦の説明をしてお誘いしたところ期待以上のお喜びようで参加を約束されました。パートナーには、もっと若く、強く、美人をと考えていたのですが御指名に与りました。会費を納め、一市民として民間行事に参加するのは前代未聞の声もありました。大会当日、飛び切りの笑顔で現れた知事御夫妻をお迎えした時は夢のようでした。暖かい御祝辞も戴き一同大喜びでした。

私が「御期待に沿わない手をうつと思いますが、腹をたてないで下さい。他の男性も同じ思いをしているのですから。」するとすかさず観戦の奥様「その点は大丈夫。結婚して四十年。一度も怒ったことのない人ですから。」ずっこけ上手で、ユーモア精神抜群の側面も拝見し、最高のパートナーに恵まれた一日でした。

「男性の足を引っ張ることになるので御気の毒」「悪手をうって怒られるのは御免」などの理由でペア碁を敬遠される女性が多いようです。が、折角囲碁の世界に足を踏み入れたのですから、精一杯楽しむ為、一寸の勇気を出して高位者にもアタックしてみてはいかがでしょう。

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