【ペア碁の思い出】

「20周年記念ペア碁大賞」エッセイ発表

石井久美子 (日本)

“キラなきゃだめだよ”“ほんとだごめんネ”

ペア碁となると、ついいらぬ事まで考え、あげくこの始末。

困らせた相手は、春に、あちらに旅立って逝った。

この棋友、私共の会の反省会で“本日は、あてがわれた女性と、一日楽しく過しました”とあいさつしたものだ。もっともその後、意中のヒトを見つけた彼は、あてがわれることもなく、いそいそ楽しんでいた。今はあの世でペア碁の相手を待ち焦がれてはいないだろうか。

私共の会では、会でペアを決める事になっている。
「国際アマチュア・ペア碁選手権大会」をはじめるについて、滝様から相談をうけ、一も二もなく賛成し、毎年、みんなを誘って参加して来た。A・B・Cクラスあわせて、優勝四回、三位一回、関東甲信越代表一回は大健闘だと思う。

ある年、肩からポシェットをかけて、チョコンと座る可愛いい小学生と、お父さんペアと対局した。終局後“お父さんより強いネ”と私の相方がほめたらニッコリ。
今の桑原陽子五段だ。

さっそうとスーツで登場。強豪すべてをなぎ倒して代表となった梅沢由香里・坂井秀至ペア。その予選会で、一人では勝てない相手に勝つ事もある不思議さを、ペア碁の醍醐味を、私は味わう事ができた。優勝候補の一角、山下千文・中園清三ペアを破ったのだ。

小中学生で活躍した夏冰君のペアとも対局した。蝶ネクタイでおしゃれをして、澄んだヒトミの可愛いい小学生が、ちょっと年上のお嬢ちゃんと一生懸命打って来た。このおばさん(?)は、ジュニアクラブOBとペアを組んでいたけど、あのときはこっちの勝ち。今だったら、沢山置かなきゃネ。

はじめの頃イキイキ活躍していた顔みしりのおじ様達もだんだん少なくなった。日本の発展に尽くした世代は、今や老いて思い出の中に暮しているのだろうか。

替って大学生のペアが増えて来た。それぞれ装いにも工夫をこらし、見ていて面白かったり、ほほえましかったり、ビックリしたり。

囲碁を別な方向で楽しめて、とてもよいと思う。

が、急所にさしかかると、“セキバライ”“机をたたく音”がするのは気のせいか。失敗も面白さ楽しさのうちにあるものと、勝ちにこだわるのはやめにしようよ。男性としての見せ場は、何事にもじっと耐えて、局面を展開して行く中にあるのでは。

Cクラスには級位者の女性がよく登場するが、優勝した記念に写真館でとったにこやかな姿が遺影になった方もある。かつて、私の教室の生徒だったその方の顔は、誇らしく、さぞや、うれしい思い出となっていた事だろう。

又、会の練習会では最弱との評判ペアが優勝となり、その女性からはずい分と感謝されたのもうれしく、なつかしい思い出となっている。

20年が30年になる事を祈りつつ。

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