![]() < 決勝戦 >現在大活躍している日本のトップ棋士が、男女16名ずつ大集合して、それぞれペアを組んで争われた「プロ棋士ペア碁選手権2013」決勝戦が、3月10日(日)に東京・市ヶ谷の「竜星スタジオ」で行われた。決勝戦の模様は、3月31日(日)に「囲碁将棋チャンネル」にて「プロ棋士ペア碁選手権2013特集番組」として放送された。 決勝戦は、謝依旻女流三冠・小林覚九段ペアと、大澤奈留美四段・溝上知親八段ペアの組み合わせである。謝女流三冠は、前回まで王銘エン九段と組んで二連覇している。個人でも女流タイトルを取りまくって、圧倒的な強さを見せつけている。ペアの相手は変わっても、大本命の評判が高かったのは当然だろう。小林九段は、ペアが決まったときから、「責任重大だ。せめて決勝までは行きたい」とプレッシャーが大きかったようだ。 大澤四段は、優勝経験があって落ち着いていた。ペアを組んだ溝上八段は準決勝を勝ったときに、「決勝が打てるだけでうれしい」と控えめなコメントを残している。緊張の決勝戦を迎えて、ふだん通りに打つことができるかどうか。平常心を保てれば、十分チャンスはある。 ![]() ![]()
対局前に、控室には両ペアが揃って、スタジオの準備が整うのを待った。解説の二十四世世本因坊秀芳(石田芳夫九段)と小川誠子六段が、話し掛けながら緊張をほぐす。滝裕子日本ペア碁協会常務理事・事務局長も見守る中、まもなく決勝戦が始まった。 ◇◇◆◇◇◆◆◇◇◆◇◇
< 対局開始 >![]() ![]() ![]() 〈【白】謝依旻女流三冠・小林覚九段ペア 対 大澤奈留美四段・溝上知親八段ペア【黒】〉 先番は、大澤・溝上ペアである。大澤四段が一手目を打って、対局開始である。序盤は静かな布石で始まったが、白番の謝・小林ペアが敵陣に打ち込んでから、激しく接触する急戦模様となった。 大澤四段と謝女流三冠が向かい合って座っている。碁に没頭して表情も豊か。二人とも前のめりの姿勢で、碁盤に顔が近づいてくる。遠くから見ていると、一対一で戦っているみたいだ。隣の溝上八段と小林九段は、背筋を伸ばして無表情。ペアを組む相手がどんな手を打っても、動揺を顔に出さないようにしている。前のめりになる女性たちを、少し後ろから冷静に見守っているような雰囲気である。勝ち上がってくるペアは、女性が強いのはもちろんだが、男性にもそれなりの理由があるのである。 女流から打つので、黒の大澤、白の謝、黒の溝上、白の小林の順番である。碁盤の四隅の近くにランプがセットされていて、手番が来るとランプが付く。テレビを見ている人にも、次がだれの番なのか一目瞭然である。それは解説者にも便利な機能で、モニターを見ながら、いい手も悪い手もだれが打ったのかよく分かる。 ![]() ◇◇◆◇◇◆◆◇◇◆◇◇
![]() ![]() 今年も石田九段の鋭い解説は健在で、バタバタと進む手順を追いながら、どんどん参考図を作って指摘して行く。両ペアとも、激しい戦いの中でも最善手を繰り返して、「一人で打っているのと変わらない出来だ」と石田九段も感心しきりだった。 ◇◇◆◇◇◆◆◇◇◆◇◇
![]() ![]() 碁は次第に激しさを増して、謝女流三冠の強烈な一手(*参考図、白1のハサミツケ)から一気に白が優勢を築いた。この手は、石田九段も驚いたが、隣で打っているペアの小林九段もびっくりである。「僕には浮かばない厳しい手」で、「後は付いて行くだけでした」と言っている。まさに謝女流三冠の独壇場である。 ![]() 溝上八段は、「謝さんに戦いに引きずり込まれないように、用心していたのに、いつの間にか引きずり込まれてしまった」と振り返っていた。大澤・溝上ペアにも勝つチャンスのある碁だったが、乱闘になってからは謝・小林ペアに主導権を握られて、すっかりペースが乱れてしまった。逆転を求めて、最後の抵抗を試みたが、ついに力尽きて投了となった。 ![]() 謝・小林ペアが見事に優勝、謝は個人で三年連続の優勝となった。大澤・溝上ペアも善戦したが、力勝負になっては分が悪かったかもしれない。 ◇◇◆◇◇◆◆◇◇◆◇◇
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