■リコー杯 準々決勝・準決勝 |
「時間つなぎ」の戦術性 |
今年のリコー杯は例年にない緊張感がある。それは対局内容の密度の濃さが大きな理由だ。一つ特徴を挙げると、いたる所に現れる高度な「時間つなぎ」の存在だ。 |
「時間つなぎ」は本来「正当な手」とは認められない。秒読みのときに時々見られるが、それは難しい攻め合いを読むとき、あるいはヨセでどこが大きいか比較検討するときなどに使われる。しかし、時間つなぎはコウ材を失うわけで、いわば非常手段といえる。 |
ところが、難しい手どころというわけでもないのに、時間つなぎと思われるような手が中盤の早い段階でときどき見られる。中盤の一手で、パートナーの意図が明確に把握できないときだ。そんなとき、「なるべく損にならない利かし」を選んで、パートナーに連続して打ってもらう。あるいは、中盤の構想そのものをパートナーに預ける場合。これはペア囲碁の戦術として、進化してきたものかもしれない。 |
まだリコー杯が創設されたころは、「ペアの息を合わせることがコツ」ということが指摘されていた。これは裏を返せば「息の合わない着手が盤上いたるところに見られた」ということにほかならない。ところが、最近のリコー杯は、手足がバラバラに動くような乱れはほとんど見かけなくなっている。全体的な構想や意図を継続するために「時間つなぎ」が使われているのだとすれば、ペア囲碁ではもはや立派な戦術と呼べるだろう。 |