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開演は13時15分だが、両対局者はかなり早くから会場入りし待機していた。
一番乗りは小林泉美女流本因坊。「山下さんはまだですか」と、控え室をのぞく。 「山下さんに聞きたいことがあったんだけれどな」とポケットから棋譜を取り出す。 前回のペア碁の棋譜らしい。
次にやってきたのは二十五世本因坊治勲で開口一番、「祷さん、挑戦者になったんだよね」。
実は、この三日前、祷五段は矢代久美子五段と女流名人戦の挑戦者決定戦を争い、見事に挑戦権を獲得したのだった。
女流名人の座に居るのは、今日対局する小林泉美さん。今回は奇しくも女流名人戦の前哨戦を兼ねることになったのである。
やがて、祷五段が登場。二十五世本因坊治勲に 「良かったね。あの碁、家で少し並べてみたけれど、ちょっと検討してみようか」 二人は碁盤の前に座ると、女流名人戦挑戦者決定戦を熱心に検討し始めた。
祷五段と二十五世本因坊治勲ペア
そこへ、少し遅れて山下敬吾棋聖が登場。泉美さんの待つ控え室に飛びこむと、待ってましたとばかりに小林女流本因坊が「教えてもらいたいことがあって」と棋譜を広げる。
小林女流名人・女流本因坊・JAL女流と
山下棋聖ペア
四人揃ったところで控え室を再び訪問し、それぞれに今日の抱負を尋ねてみた。
治勲 なんだか今回はどうしても勝ちたいという気持ちになってしまって…。ここまで少し勝ちに走りすぎたかな、と反省しています。 今日は最後の日ですから、いい意味で気を楽に肩の力を抜いて打ちたいと思います。」
祷  先生がこんなに一生懸命打ってくれて、本当に幸せなことだと思っています。それに今日の四人で一局の碁が打てるということが、さらに幸福なことだとも思うんです。嬉しいです。」
小林 一人じゃ打てないような碁を山下さんのお陰で打たせてもらっています。また、趙先生と対局することは私の大きな目標の一つでした。今回、ペア碁という形で、その夢が実現して嬉しいです。山下さんとはだんだんと息が合ってきたし内容も良くなってきていると思うので今日も頑張りたいです。」
山下 今日も、僕はひたすら泉美さんについていくだけです。」