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第28回国際アマチュア・ペア碁選手権大会

観戦レポート 2日目( 12/3 日 )

二日目会場の様子

 大会二日目は、本戦出場の32ペア、世界学生ペア碁選手権大会出場の16ペア、そして、「荒木ハンデ戦」出場の148ペアが勢ぞろい。早朝から会場が賑やかに盛り上がりました。
会場ロビーには、今年行われた「世界ペア碁最強位戦」の模様を伝えるパネルも並びました。

 開会式では、前日に引き続き、日本ペア碁協会常務理事の滝裕子があいさつに立ちました。
1990年に4カ国・地域の選手と始めた本大会が、28年目を迎え21カ国・地域の選手が集まる大会に成長したこと、学生の大会も今年で4回目を迎えること、そして、「プロの先生方にも楽しんで真剣に取り組んでいただける」と始めたプロのペア碁大会も、今年、「世界最強位戦」という夢の頂上決戦が行われるに至ったことが紹介されました。「囲碁は、人間を魅了してやまない古来から続いているゲームでございます。2対2で戦うペア碁は、囲碁とはまた異なった競技性のあるゲームとしての魅力もあり、注目されております。2020年に向けて、さらに一層盛り上げていき、国際親善友好に貢献したいと思っております。長いことご支援いただいているJR東日本さまはじめ、ご協賛いただいた各社に心よりお礼を申し上げます。ご参集いただいた皆さまには、楽しんで真剣に笑顔で対局をされ、今日一日を過ごしていただけますように」

 審判のプロ棋士三名が紹介され、審判長の石田芳夫二十四世本因坊から競技説明がありました。
石田審判長は「この大会が始まった28年前は、私もまだ若く、髪も真っ黒でした。井山裕太七冠が生まれた年でもあります。今日この中には、まだ生まれてなかった方も大勢いらっしゃるでしょう。歴史を感じますね」と、競技説明の前に暖かく話され、会場の緊張感を和らげました。

選手宣誓

 続いて、選手宣誓。
日本選手を代表して、笹子理紗・寺山文哉ペアが、
海外選手を代表して、イギリスのジェニー ラドクリフ・フランシス ローズペアが宣誓をつとめました。

 恒例のベストドレッサー賞の審判長は、今年もコシノジュンコ氏がつとめてくださいました。
コシノジュンコ氏「昨夜の前夜祭から一転しまして、今日は皆さん真剣勝負ですから、心の持ち方が違われていると思います。「ベストドレッサー賞」と聞いて、皆さんの中には、「そういう見た目は、勝負とは関係ない」と思っていらっしゃる方がいるかもしれません。でも、私は、ミスインターナショナルの審査員もしておりますが、言葉も越えて、見た目は大きな言葉になります。また、今日は、一人ではありません。二人が一つになるという大きなチャンス。感性といってもよいでしょう。私は、お二人の感性のジャッジをするのではないかと思っています。どんな世界でも、プロになって上にあがりますと、トップの方たちのトータルな感性は素晴らしいです。見えるものと見えないもの二つで一つ。そのバランスが大事です。右手と左手が一緒になってどんなことにも挑戦できるように、皆様は今日はお二人が右手と左手になり、ファッションは戦闘服というつもりで。お互いの見えないもの・技術とバランスよくあっていただきたいと思います。世界の戦いです。クールなかっこいい選手という自信をもって戦ってほしいです。今日もどんなファッションに出会えるか楽しみにしております。」

ベストドレッサー賞コシノジュンコ審査委員長

 コシノ氏は、今年、文化功労者として顕彰されました、滝常務理事がお祝いの花束を贈呈し、会場からも大きな拍手が贈られました。

 いよいよ、対局開始のときが迫ってきました。
司会の関本なこさんから「対局時計の確認をお願いします」と声がかかります。
本戦と世界学生ペア碁選手権大会は、持ち時間が45分。荒木ハンデ戦は40分。秒読みはなく、時間が切れたら負けとなります。
石田審判長が「時間には気をつけて」と話され、「それでは対局を始めてください!」の開始コールが会場に響きました。

 荒木ハンデ戦は、A、B、Cの3ブロックに分かれ、148ペア296名が参加しました。

 Cブロックには、子供同士のペアが多く、愛らしい姿に大人たちも思わず笑みがこぼれている様子。幼稚園年長の首藤千愛ちゃんは「囲碁は、オイオトシをするのが好き」と話してくれました。
最年少ペアは森田結月ちゃんと牧野翔大くん。二人とも6歳です。負けると「うーん…」、「あんまり打ったことないから」としょげていた結月ちゃんと翔大くん。でも、お母さんたちは「いつもより、ずっと楽しそうです」「特に終わったあとに、あんなに楽しそうにしている顔は見たことありません」と驚いた様子で見守っていました。
子供教室を主宰され、生徒たちを何ペアも送り込み、ご自身も出場されている大橋憲昭さんは、白星に「教え子のいい手に救われました」と幸せそうに笑い、応援にも忙しそうでした。

ダイアナ ガーネットさん、森下大地さんペア

 NHKEテレの「囲碁フォーカス」に出演中のダイアナ ガーネットさんも俳優の森下大地さんとペアを組んでCブロックに出場。二連敗と立ち上がりは息が合わないようでしたが、その後二連勝。ダイアナさんは「パートナーがだんだん私に息を合わせてくれて2勝できました」と満面の笑み。森下さんも「自分が考えていない局面に変わっていくのが新鮮でした。楽しかった」と初めてのペア碁経験を語ってくれました。

 最年長ペアは、藤田美穂子さんと近藤士郎さん。Bブロックに出場です。「え? 最年長なんですか? だからよく写真を撮られているのか」と近藤さん。「たしかに、ペアを組んでうん十年です」と笑い、藤田さんも隣で笑い声。「いつまでも楽しめていいですね」と藤田さんが話すと、近藤さんも隣でうなずいていらっしゃいました。

 Bブロックには親子ペアも見受けられました。奥花珠さん(小学4年)と真也さんの父娘ペアは、常連です。「昨年よりうまく打てた?」と尋ねると、花珠さんは「同じくらい」。するとお隣で真也さんが「いえいえ、今日のほうが伸び伸び打てていました」。毎年の楽しみのようです。

 高山もも代さんと透弥くん(小学2年)は、母息子ペア。高山さんは学生時代の強豪です。ご主人は囲碁を打たれないそうですが、「長女と長男と次女に教えました」。透弥くんは、「一番弱い」そうで、「二人で打つほうが楽しい」。家で姉妹ペアと練習をしてきたそうで、対局後は「あそこでああ打てばよかったのかな」と小声でお母さんに尋ねる透弥くん。ペア碁の魅力にとりつかれてきた様子でした。

 Aブロックにも親子ペアを発見。囲碁インストラクターの大沢摩耶さんと璃空くん(小学5年)です。「長男ががんばってくれて、こんなに強いペアに勝てそうだったんですよ」と摩耶さんは満足そう。お相手は関口裕理・村上深ペアでした。アマ強豪の村上さんは「はい。最後の時間攻めという奥の手で勝たせていただきました」とのこと。

中丸仁さん、由紀さんペア

 全盲の中丸仁さんも、今年も奥様の由紀さんとAブロックに出場されていました。「本番が練習です」と話される仁さんは、日曜に仲間との碁会などで対局を楽しんでいる。奥様と対局することは『ごくまれ』とのこと。「ペア碁では(奥様の)打つ手に驚きます。お互い様でしょうが」とにこやかに笑われる。黒石と白石を指で触ってわかる盲人用の盤石を使用するのですが、いつも、どうしても時間がかかってしまうのが残念。でも、この日は見事一勝をあげました。最後に勝ちました!」とお二人そろって笑顔で帰途につかれていました。

 さて、Aブロックの後藤俊子(76歳)さんと文郷さん(51歳)も親子ペアです。文郷さんは元学生本因坊の強豪。数年前に地方勤務から東京に戻り、今年お母様に「出てみない?」と声をかけたそうです。「息子に誘ってもらって」と俊子さん。「今日はどうだった? 好きなように打てた?」と優しく声をかける文郷さんに、俊子さんは「好きなように打って、全部負けました」と言いながらも終始嬉しそうな笑顔でした。

 世界学生ペア碁選手権大会も、静かに熱い戦いが繰り広げられました。
日本期待の藤原彰子・大関稔ペアは、初戦は白星。お相手はウクライナ・フランスペアでした。男性のヴァレリアン ブエテさんは「いい勝負だったのに、僕が自殺手を打ってしまいました」と頭を抱えていました。藤原さんは「ヴァレリアンさんは天才肌。私の気づかない手も打たれました。私のミスで悪くしたのですが、最後は相手のポカに助けられました」

倉科夏奈子・今野遼平ペアと韓国のチェ ヒョンジ・ユン ナムギペア

 倉科夏奈子・今野遼平ペアは韓国のチェ ヒョンジ・ユン ナムギペアに惜敗。今野さんは、「強かったです。こちらもよかったのですが、中盤で崩しちゃって」。こちらは、検討も終えたところで、チェさんが「ありがとうございました」と日本語であいさつするつもりが「ごちそうさまでした」。ややたって、「あ。間違え」と慌て、4名が仲良く笑い声をあげるヒトコマもありました。

 もう一組の韓国ペアも強豪でした。イ ソンア・パク ジョンウクペアに、藤原・大関ペアが敗退。パクさんは「苦しい戦いで、黒(日本)が有利でしたが、少し足踏みをして、白が先手を取れ大きなところに回ってよくなったかな」と振り返りました。大関さんは「いいとは思ってなかった」そうです。

 塚田花梨・杉田俊太郎ペアは連勝。塚田さんは「戦いで読み勝ちました。ヨセに入ったときは優勢でした」と二回戦を振り返ってくれました。三回戦は「定石を間違え、序盤から苦しくしてしまいました」とのこと。
残念なことに、日本勢は全ペアに黒星がつき、優勝争いから脱落しました。

 韓国のチェ ヒョンジ・ユン ナムギペアと、中国のジン シャン・ヘ サンペンペアの全勝決戦は、終盤の大逆転劇で幕を下ろしました。勝ったユンさんは「白(中国)が優勢でした。盤面でもいいぐらい。たぶん勝ったと思って緩めすぎたのだと思います。ヨセで10目は損をしてくれ、逆転できました」と控え目にコメント。中国ペアは、ヘさんが「ちょっと残念でした」、ジンさんが「同じです」と言葉も少なく無念そうでした。

 さて、本戦も熱戦が展開されました。
中でも今年は、欧米ペアの活躍が目を引きました。欧米のペア碁人気が、実力アップにもつながってきているのでしょう。
日本ペアに2勝をあげたヨーロッパ碁チャンピオン(ロシア)のナタリア コヴァレヴァ・ドミトリー スリンペアは、直前に行われたヨーロッパ選手権でプロ・プロペアにも勝利したという実力です。
ナタリアさんは、現在はロシア囲碁連盟の副会長をされています。子供のころに「家の近くによい子供向け囲碁クラブがあり、そこでよい先生に習いました」とのこと。「女の子に人気でカリスマ性があり(笑)、自然にみんな集まってきたのです。最初にこの大会に参加したとき、私は13歳でしたが、そのときは、その先生とペアを組んだのですよ!」
今回のパートナー、ドミトリーさんは「僕はプロになるには年をとりすぎている」と笑いつつも、職業を尋ねると「碁打ち」と返ってきました。ヨーロッパの囲碁の大会にはほとんど参加されているそうです。そして「パートナーが強いので、一人で打つより二人で打つほうが強い」と話し、ナタリアさんは「Good answer! 彼はジェントルマンね」と笑っていました。
ナタリアさんは、前日の日本ペアとの一回戦を「戦いがたくさんあり、最後に取れました」と振り返りました。二回戦では強豪の韓国ペアに敗れましたが「面白く楽しめました。ある程度のところまでは勝負できました。一方的ではなかった(笑)」と笑顔でした。

 その韓国ペアと並び、中国ペアも順調に白星を重ねていきました。11歳の呉さんは、パートナーが打ち下ろすと、うんうんと小さくうなずいてホッとした表情を見せるなどの貫録。でもレドモンド九段は、「少し考えていることが顔に出すぎるかな」とコメントされていました。
準決勝となった韓国ペアと中国ペアの全勝決戦は、韓国ペアが制しました。敗れた趙さんは「我々は優勝したかったのでとっても残念ですが、初めて日本に来れて、この大会にも出場できてうれしかったです」と優しい笑顔で優しく語ってくれました。
柳さんは「かなり形勢が悪かったのですが、なんとか逆転できたかな、という印象」と中国ペア戦を振り返り、李さんは「柳さんとは普段から仲がよく、お姉さんのよう。気楽で楽しいです」と笑顔を見せた後、決勝戦に向けて「これまでも大変な碁ばかり。次も大変だと思いますが、最善を尽くしてがんばります」。柳さんも「実は韓国が11年連続で優勝してきたことに、プレッシャーを感じていました。でも、ここまできたら優勝したい」と決勝戦に意欲を見せていました。

決勝の様子

 決勝に勝ち上がったもう一組は、日本の宇根川・瀧澤ペアです。「どのペアも強く、冷や冷やしながら打ってきました。結果はたまたまついてきているだけ」と瀧澤さん。宇根川さんも「ここまでよく勝ったなという碁ばかり。あれもまずくこれもまずく(笑)」と4回戦を振り返り、「瀧澤さんとは15年ぶりでペアを組むのは2回目なのですが、こんなに楽しめ、思い出深い大会になるとは思いませんでした。彼の心労がひどいとは思うのですが…胃に穴があかなければいいのですが(笑)」と、すでに大会が終わったようなコメントで決勝に臨みました。二人は「時間だけは気をつけよう」と話していたそうです。

 決勝戦は、石田芳夫二十四世本因坊と、別室では英語でマイケル・レドモンド九段が大盤解説を担当しました。日本語大盤解説会場の聞き手は小川誠子六段です。
石田芳夫二十四世本因坊が、「息の長い碁」、「いい勝負」と推移し、右上のコウに白(日本)が勝つと、「白よし」に。会場はおおいに盛り上がりました。ところが、白が「打ちすぎ」、コウを蒸し返されて逆にコウを制されることになり「逆転」。その後、互いに時間のない中、黒の着手が乱れ始めますが、一段落して「白の再逆転はありませんね。形勢は黒よし」。一同が肩を落としかけたとき、対局場から「時間切れで、黒負けです」の一報が入りました。

 その後、優勝ペアも大盤解説会場に現れ、小川誠子六段のインタビューに答えました。
宇根川さんは「恥ずかしい終わり方で申し訳なかったです。お互いに持ち時間が残り1、2分になってからは頭が真っ白。(勝ったのは)幸運としか言いようのない状態でした」と熱い戦いを振り返り、瀧澤さんは「こんな勝ち方でいいのか、という気持ちですが、勝ったことだけはよかった」と、会場のギャラリーの笑いを誘っていました。
その後は石田芳夫二十四世本因坊がインタビュアーを受け継ぎ、楽しい会話が続きました。
石田「昨年も二人は組んだの?」
瀧澤「いえ。2回目ですが、1回目は15年前です」
石田「15年前!? 小学生ぐらい?」
宇根川「いえいえいえいえ(笑)。大学生のときに」
石田「(瀧澤さんに)あなたが全国で優勝したのは?」
瀧澤「11年前です」
石田「そう。また活躍しないと。平田博則さんが、90歳をこえられてまだ活躍されてますよね。90までにはまだ50年以上ある(会場。笑)。今日も優勝したしね」
瀧澤「いえ。今日の碁は…」
石田「いやいや、一人で打つより出来がよかった(会場。笑)不思議なもので、一対一より力が出ることあるんですよね。これからもぜひパートナーとして。ところで、お二人はご結婚は?」
二人「まだです」
石田「してないの? では、これを機に(会場。大笑)」
そして、控え目な優勝ペアに、石田芳夫二十四世本因坊は「相手の時間切れという形ではあったけど、勝ちは勝ち。堂々とした打ち方をしていましたから」とエールを送られていました。

 かくして、日本勢の18年ぶりの優勝という形で今年の大会は幕をおろしました。
宇根川さん、瀧澤さん、おめでとうございます。

優勝した宇根川さん、瀧澤さんペア

大会結果

第28回国際アマチュア・ペア碁選手権大会
優勝:日本
宇根川 万里江 六段・瀧澤 雄太 七段 ペア
第4回世界学生ペア碁選手権大会
優勝:韓国
蔡 賢至 六段・尹 楠期 七段 ペア
荒木杯ハンデ戦Aブロック優勝
呉 理沙 六段・外谷 一磨 六段 ペア
荒木杯ハンデ戦Bブロック優勝
白井 澄 4級・伊達 昌希 八段
荒木杯ハンデ戦Cブロック優勝
中村 奈摘 12級・中村 庸太郎 七段

各大会、各ブロックの優勝者には表彰状、盾、記念品が授与されました。

最年長・最年少出場ペア

最年長ペア(合計158歳)
B 藤田 美穂子 初段(77歳)・近藤 士郎 五段(81歳)
最年少ペア(合計12歳)
C 森田 結月 20級(6歳)・牧野 翔大 20級(6歳)

最年長・最年少出場ペアには記念品が授与されました。

ベストドレッサー賞

和装・アワード
ハンデ戦Cブロック213番 福島 涼子・福島 啓友 ペア
ナイスペア・アワード
ハンデ戦Bブロック120番 佐藤 夏未・山本 貴士 ペア
キッズ・ファッション・アワード
ハンデ戦Cブロック239番 石田 希月・林 仁海 ペア
ナショナル・コスチューム・アワード
韓国代表 柳 昇希(リュ スンヒ)・李 相斌(イ サンビン) ペア
モンゴル代表 トゥンガラック ラーフジャ・エルデニスフ オド ペア
ハンガリー代表 ジュリア セレス・ピーター マルコ ペア
ユニーク・アワード
ドイツ代表 リザ エンテ・ロルステン クナウフ ペア
ファミリー・アワード
スイス代表 マルタ モリソン・ロベルト ロリソン ペア
ベストドレッサー各賞受賞者全員の記念写真

各賞受賞者には記念品が授与されました。

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