ペア碁による認知機能低下抑制効果

「勝てば喜び2倍、負けても悔しさ半分」
ペア碁の科学的効果
認知機能の低下抑制、実行機能の改善、孤独を癒し気分を改善

「ペア碁」は、パートナーや対戦ペアとの交流やコミュニケーションの要素が入るため、囲碁と比較して、高齢者の認知機能や脳機能に更なる効果が得られる可能性があると推察されます。「囲碁」の認知機能の低下抑制効果の研究に長年の実績と経験がある東京都健康長寿医療センターの研究チームと共同で、「ペア碁」が認知機能低下抑制に効果があることの実証研究を進めています。

ペア碁による認知機能低下抑制効果について

飯塚あい 医師

飯塚 あい 医師

東京都健康長寿医療センター研究所所属。

囲碁による認知症予防・進行抑制効果、フレイル予防、 高齢者の社会参加など、高齢者と囲碁を結びつけた 幅広い分野について研究。

囲碁は、高齢者の認知機能の維持や改善に効果があることがわかってきています。しかし、囲碁は基本的に1対1の真剣勝負であるため対話が生まれにくく、また勝敗への心理的な負担から参加をやめてしまう方も少なくありませんでした。

そこで、こうした課題の解決策として、私たちはペア碁に注目しました。ペア碁は4人で1局を打つため自然と会話が生まれ、交流がとても活発になります。また、「喜び2倍、悔しさ半分」と言われるように、負けても勝敗の負担が軽く、気持ちが楽になります。さらに、ペアの相手の意図を読み取りながら一手を選ぶ必要があり、認知機能への刺激も大きいと考えられます。

私たちは研究として、囲碁未経験の高齢者を対象に、週1回90分、全12回のペア碁入門講座を開講し、参加前後で認知機能や気分の変化などを評価しました。その結果、計画を立てて行動する力(実行機能)が改善する傾向が見られました。ペア碁では、パートナーの手に合わせて計画をその都度組み直し、相手に配慮しながら自分の一手を決める必要があります。こうした過程が、認知的な柔軟性や計画力の向上に影響した可能性があります。

( Iizuka, Taki et al, Geriatrics and Gerontology International, 2025 )

加えて、参加後には孤独感の有意な軽減が見られました。これは、ペア碁ならではの協働性と、自然に会話が生まれるという特徴が影響した結果だと考えられます。つまり、ペアを組んで協力し合う過程そのものが、人とのつながりや安心感につながったと考えます。さらに、教室内で知り合った参加者のうち約半数が、教室外でも交流を持つようになりました。これは従来の1対1の囲碁では得られにくかった、新たな社会的ネットワークが形成されたことを示しています。

ペア碁には、脳の活性化だけでなく、心の健康や人とのつながりを広げる効果も期待できます。認知症予防、生きがいづくり、地域での交流促進など、さまざまな場面で活用できる可能性があります。何より大切なのは、楽しみながら続けられること。ペア碁には、そんな豊かな時間を生み出す力があると感じています。

本文の内容は2025年12月当時

飯塚医師のインタビュー記事

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