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公式スペシャルイベント「"パンダ先生"チャレンジマッチ2017」

詰碁問題に挑む日本代表の謝依旻六段・井山裕太九段ペア

午前10時。対局にさきがけて、大会公式スペシャルイベントの「"パンダ先生"チャレンジマッチ2017」がスタートした。この企画は、昨年の「ペア碁ワールドカップ 2016 東京」開催時にも行われた。好評を受けての第二回となる。

簡単に概要とルールをご紹介すると……
世界一の詰碁AI「死活の神様"パンダ先生"」と本大会出場のペアたちが、詰碁の超難問に挑戦して、スピードと正確さを競い合うイベントだ。
競技のルールは簡単。合計5問が出題される。各問題の解答制限時間は10分。最初に正解したペアに5ポイント、二番目に正解したペアに4ポイント……と得点が与えられ、5問終了時に、より多くのポイントを獲得したペアが優勝となる。昨年から少し改良されたのは、二点。不正解の場合にポイントがマイナスにはならないこと。そして、制限時間となった時点で、まだ解答していないペアにも解答権が与えられること。ここで正解すると1ポイントもらえる。

この企画は、3種類の勝負が楽しめるのが魅力。
一つ目は詰碁の人工知能(AI)"パンダ先生"と人間の勝負。
二つ目は、世界トップ棋士たちの間の勝負。
そして三つ目は、出題者と解答者の勝負だ。

今回の詰碁を出題したのは、昨年に続いて河野臨九段、大場惇也七段、大橋拓文六段の三名。河野九段と大場七段は、超難解な詰碁作家として、プロ棋士の間で定評がある。ピアノも玄人はだしの腕前を持つ大橋六段が作る詰碁は「芸術的」と言われている。ちなみに昨年、参加棋士たちの投票で決める、もっとも素晴らしい問題に与えられる「最優秀作品賞」には、大場七段の問題が選ばれた。 今年は、この三名に、新たに林漢傑七段と芝野虎丸七段の二名が加わった。林七段の詰碁は、「解いた後に爽快感がある」と張栩九段が評している。芝野七段の詰碁は、まだあまり知られておらず、審判長の二十四世本因坊秀芳(石田芳夫九段)も「虎ちゃんは、どんな問題を創るのかな」とずいぶん前から楽しみにしていた。

さて、出題者5名は、朝から頭を突き合わせて、念入りにチェックをしていた。
出題者たちは、答え合わせをするときに白番を持って対応するのだが、「正解を打ってくれれば対応できるのですが、間違えた手を打ってきたときに、正しくとがめるのが、自分以外の人が作った問題のときに案外難しい」と河野九段。このコメントを聞いただけで、どれほど難しい問題か、ということが想像できる。
大場七段は「皆さんいい問題ですので、今年は賞はいただけなさそう……でもがんばりました」。初登場の芝野七段は「一応、大きな(広いエリアの)問題はできました」とそれぞれ難問に自信ありの様子だった。
一方、解答者は……「全然解ける自信がないんですけど」と井山裕太六冠。さて、結果はどうなっただろう。

4ペアは、隣のペアが見えないように仕切られたテーブルに、向かい合って着席。"パンダ先生"のパートナーは、昨年に引き続き、大澤摩耶さんがつとめた。大澤さんは、5年前、フランス・リールで行われた第2回ワールドマインドスポーツゲームズの「ペア碁」競技の金メダリストだ。

いよいよ、競技がスタート!
まず、1問目が入った封筒を手渡される。
"パンダ先生"と大澤さんは壇上のテーブルに。"パンダ先生"の画面に問題図が入力された時点で、
「よーい、始め!」とかけ声がかかった。
参加選手たちは、いっせいに開封し、問題図を碁盤に並べる。「これは難しいそうだな」というワクワクした表情になっているのが伺える。
ところが、「解けた」ときに卓上のボタンを押すのだが、どのペアも頭を抱えていてボタンを押す気配がない。謝・井山ペアは二人で石を並べながら、崔・朴ペアは石は置かずにときおり指で碁盤を指しながら、必死に考えている様子だった。
3分経過したところで、パンダ先生が「正解」。制限時間残り30秒となったところで、崔・朴ペアと黒・陳ペアが相次いでボタンを押した。が、答え合わせの結果は「不正解」。日本2ペアも「不正解」。
"パンダ先生"のみが5ポイントを獲得し、4ペアは0ポイントという立ち上がりとなった。
2問目は、さらに「難問」。なんと、"パンダ先生"も解答できなかった。
3問目は、"パンダ先生"が約40秒の考慮で「正解」。崔・朴ペアが約3分30秒の考慮で「正解」して4ポイント。そして、制限時間ぎりぎりに謝・井山ペアも「正解」。3ポイントを獲得した。

そして、結果は……
"パンダ先生"ペア 20ポイント 優勝
崔・朴ペア 4ポイント 準優勝
謝・井山ペア 3ポイント 三位

昨年に続いて、"パンダ先生"ペアが圧勝。出題者と解答者の勝負は、出題者に軍配が上がったようだ。
唯一正解者を出した3問目を出題した大橋六段は「みんな、難しい問題を出しすぎですよね」と笑っていた。"パンダ先生"も解けない難問は、芝野七段の作だった。そして、今年の「最優秀問題賞」、「優秀問題賞」は、それぞれ林八段、河野九段の問題が受賞した。

「世界ペア碁最強位戦 2017 本戦 一日目」開会式

会場内は超満員

頭のウォーミングアップを済ませ、ゆっくり昼食をとった選手たち
そして13時30分、会場に集まった千人近いファンに見守られて、開会式がスタートした。

はじめに、主催者を代表して、滝裕子日本ペア碁協会常務理事があいさつに立った。
滝裕子常務理事「このようにたくさんの皆さまにお集まりいただいて「世界ペア碁最強位戦2017 本戦」を行うことができ、本当に喜びに満ちております。昨年行いました「ペア碁ワールドカップ2016東京」を渋谷のヒカリエで行いましたところ、4000人の来場者を記録いたしました。その勢いと盛り上がりに感動いたしまして、なんとかこの盛り上がりを維持し、2020年に東京で開かれますオリンピック・パラリンピックの大会に、マインドスポーツとして、ペア碁が何かできないかしら、と今回の大会を企画いたしました。日本、中国、韓国、中華台北のトップ棋士の皆さまにお声をかけさせていただきまして、役員の皆さまにもご動員いただきまして、そして今日があり、決勝に勝ち残られた勝者が、昨年のワールドカップの勝者であります中国の於之瑩五段・柯潔九段ペアと10月に対戦するという、私たちとしても張り切ったこの企画でございます。そして、もちろんそのためには、スポンサー各社の方々、世界の囲碁団体の皆様、日本棋院、関西棋院、中国、韓国、中華台北、ヨーロッパ、アメリカ、それからマインドスポーツ、全ての団体様に大変なご援助をいただいております。また、明日の決勝戦では、東急様のご好意により「能楽堂」を解放していただきまして、日本情緒あふれた日本伝統のお能の舞台で、日本の伝統である囲碁、ペア碁をご披露させていただきたいというコンセプトでございます。
ペア碁は、普及を始めて28年になりますが、世界75か国・地域もの世界ペア碁協会への加盟国がございます。元々、男性だけでなく女性もぜひ参加して欲しいという願いでこのペア碁をはじめましたが、男女であることが囲碁普及と交流と親善にとても効果があったなというふうに、28年を振り返っております。
パートナーの打つ手を尊重して打ち続け、尊重しながら一局を創り上げていく、ゲームの奥深さで考え抜いて勝ちぬく。そしてそのあとは、勝って嬉しさ二倍、負けて悔しさ半分。本当にそんな心境になるようなペア碁でございます。
今回の企画も、世界一線の、スケジュールいっぱいの、超活躍していらっしゃる棋士の皆さんが公開で対局してくださる。これほど囲碁普及につながることはないと確信しております。どうぞこの二日間、すごい名局がでると思います。大変に強い棋士の皆さまが、パートナーの打つ手を生かしてどう打つか、またまたこれは見ごたえのあるものだと思いますので、どうぞお楽しみくださいますように。そ」

続いて、審判長の大竹英雄名誉碁聖、副審判長の小川誠子六段と、吉田美香八段、そして、審判の金秀俊八段と林漢傑七段が紹介され、大竹審判長がご登壇された。

大竹英雄審判長「こんなに大勢の皆さまにおいでいただいて、関係者としてありがたく思います。囲碁が世界中に広がるように、平和を求めて、ということでペア碁協会の皆さまが普及に励んでくださり、囲碁関係者としては本当にうれしいです。今日は、世界トップの8人のプレーヤーを皆さんは、じかに見ることができる。そして同時に、趙さん、石田さんが解説する、すごい内容の話を聞ける。これもまた素晴らしいことだと思います。皆様十分に耳をすまして、どうぞ素敵な時間をお過ごしいただけますように。」

会場から盛大な拍手が送られるなか、大竹審判長からも紹介のあった、大盤解説者の紹介に移った。
解説は趙治勲名誉名人と二十四世本因坊秀芳(石田芳夫九段)、聞き手は小川誠子六段と吉田美香八段。昨年の「ペア碁ワールドカップ 2016 東京」でも4000人のファンを沸かせた四名に、再び大きな拍手が送られた。

そして、選手紹介。バックスクリーンには、ペアのイメージ画像が映し出され、戦いを盛り上げる音楽と照明の演出も加わって、一組ずつペアがステージに登場した。ファンの期待が大きいのだろう、謝・井山ペアの登場シーンでは、ファンの拍手がひときわ大きくなった。

崔精七段・朴廷桓九段ペア(韓国)
黒嘉嘉七段・陳詩淵九段ペア(中華台北)
謝依旻六段・井山裕太九段ペア(日本)
藤沢里菜三段・羽根直樹九段ペア(日本)

選手たちは、前日の表情とも、午前中に詰碁に取り組んでいたときの表情とも違い、対局モードのスイッチが入った様子だった。ファンの拍手に見送られて退室し、崔・朴ペアと黒・陳ペアは、対局室へと移動した。

主催

日本ペア碁協会 / 世界ペア碁協会 / 世界ペア碁最強位戦 2017 大会実行委員会