大会に臨む参加棋士たちのコメントをご紹介しよう。
昨年優勝の加藤啓子六段・羽根直樹本因坊ペアは、大会規定により、今年も同じペアを組む。
羽根本因坊は、「昨年は優勝することができ、加藤さんに喜んでもらえたのが嬉しかった。今年も喜んでもらいたいと思っています」とにこやかに連覇宣言。会場からは「お〜」とどよめきの声があがった。
山下敬吾棋聖とのペアを引き当てた井澤秋乃四段は「数年ぶりにこの大会に出場でき、本当に嬉しく思っています。実は今日、ここに来る電車の中で、誰とペアになるかなと想像していたとき、真っ先に頭に浮かんだのが山下棋聖でした。片想いかもしれませんが、精一杯がんばろうと思います」
初出場の石井茜初段は、同じ関西棋院の坂井秀至七段とのペア。「このような大会に出場でき、嬉しく思います。同じ関西棋院なので、練習できたらいいなと思っています。足を引っ張らないようがんばります」
研究熱心な坂井七段は、対局前に必ず対戦相手の棋譜を並べるという。「ペア碁の前には、自分のペアも含めて、3人分の棋譜を並べられるそうですよ」と伝えると、石井初段は「本当ですか!? 練習と称して、たくさん勉強させていただければ嬉しいですね!」
小林覚九段は「僕は一人じゃだめ。この大会に賭けています。さきほど、羽根さんはペアに喜んでもらいたいとおっしゃってましたが、僕は僕自身が喜びたいです。喜ばせてもらいたい。佳奈さん、よろしくお願いします!」
もう一人の初出場、最年少でもある兆乾初段は、「すごく尊敬している先生」だという依田紀基九段とのペアが決まり、緊張と喜びが同時に押し寄せた表情。「ペア碁は経験がないので少し不安ですが、楽しみです」と話した後、壇上で思わず依田九段の方を向き「よろしくお願いします」と深々とお辞儀。その初々しさに、会場が一気に暖かい空気でいっぱいになった。
依田九段も緊張気味で「大会までに、兆さんの碁も並べて、研究しようと思います」
「大会の日には、名人戦の日程も終わっており、安心して困らせることができるのでホッとしています」と満面の笑みだったのは大澤奈留美三段。
ペアは、抽選会の日から間もなく、史上最年少の名人となった井山裕太新名人だ。
片岡聡九段は知念かおり四段とのペアが決まった。「この大会に出場するのは久しぶり。10年ぶりぐらいでしょうか。優勝したら合宿に行かれるというので、楽しみにしています。あ。優勝したつもりになってますけど(笑)」
向井千瑛三段は、「この大会には一昨年参加させていただいたのですが、一勝もできずに終わりました。今年は一勝できたら嬉しいです。よろしくお願いします」。これを受け、ペアの河野臨九段は「今年もこんな楽しい大会に出場できて嬉しいです。一勝とはいわずに、合宿に行かれるようにがんばろうと思います」
奥田あや二段は蘇耀国八段とのペアが決まった。「二年ぶりに、また、この華やかな舞台で打てることを楽しみにしています。私も一勝もできなかったので、今年は勝てるよう、精一杯打ちたいと思います」
吉田美香八段とのペアが決まった黄翊祖七段は、なかなかあいさつの言葉が出てこず「…すみません、お見苦しくて…あがってしまい…」と壇上で緊張気味。それでも「合宿の光景を思い浮かべつつがんばりたいです」と、やはり優勝を宣言した。
本大会で抜群の好成績をおさめている鈴木歩四段は、今年は山田規三生九段とのペア。鈴木四段の「規三生先生は、お話が面白くて、ときどき皆で夕飯を食べにいくときなども、お腹が痛くなるほど笑わされます。碁も強いし。私は、この大会では足を引っ張るのが恒例なのですが、見捨てずにリードしてください」というあいさつを受け、山田九段は「碁のことをほめてもらえないのかと心配でした。歩さんがペアになってしまったので、いきなり優勝候補になってしまいプレッシャーを感じています」。
「お話が面白い」山田九段のあいさつに、会場はおおいに沸いていた。
緊張と興奮の抽選会を終えた後、恒例の「優勝ペア予想」が、大会当日の大盤解説者・石田芳夫二十四世本因坊と、聞き手・小川誠子六段にて行われた。
石田「毎年、たいてい当たらないのですが(笑)」
小川「今年も、初々しい兆さんはじめ、楽しみな対局が多いですね」
石田「昨年は、謝依旻・井山裕太ペアが優勝するでしょうと予想したのですが、決勝戦で、羽根さんに、イイカゲンな開き直りの手を打たれて、逆転されてしまいましたね(笑)」
小川「本因坊戦で三連敗四連勝した羽根さんの強さの秘密を見たと、石田先生、感心されてましたよね」
「今年は、トーナメント表がもう出来上がっているから、優勝候補ペアを予想するのは、いろいろきついなあ」と頭をかきながらも、石田九段が最終的に下した予想は…Aブロックが、本命は鈴木歩・山田規三生ペア。対抗が、大澤奈留美・井山裕太ペアと向井千瑛・河野臨ペアの勝者。Bブロックは、本命が、加藤啓子・羽根直樹ペアと兆乾・依田紀基ペアの勝者。対抗が井澤秋乃・山下敬吾ペア。
果たして、石田九段の予想どおりの展開に、今年はなるのだろうか? それとも、今年もならないのだろうか?
待望の夢の祭典、「プロ棋士ペア碁選手権2010」大会日は、12月5日、東京・市ヶ谷の日本棋院にて。今年は、優勝決定まで一気に行われる豪華な一日となる。
ライター:高見亮子
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