抽選を行ったペアから、順に意気込みを語っていく。楽しいコメントを紹介しよう。
知念かおり四段・羽根直樹九段ペア
知念四段がくじを引いて、すぐ意気込みを聞かれて戸惑っていた。羽根九段に助けを求めて、先に話してもらうように頼む。分かりましたと、前に出た羽根九段が、「知念さんとは初めて組みますね」言い始めたものだから、すぐ知念四段に、「二度目ですよ」と突っ込まれて恐縮していた。「結果はよくなかったのですが、いい碁が打てた記憶があります。今回は頑張りたいと思います」と知念四段にすっかりフォローされていた。
佃亜紀子五段・依田紀基九段ペア
佃五段が先にあいさつ。「ペア碁は一手一手ドキドキする緊張感が好きです。男性の先生には、私の打った手でいつもびっくりさせてるので、よろしくお願いします」と話を振ると、「ぜひびっくりさせてください」と依田九段が応じて笑いを誘う。
謝依旻女流本因坊・王銘エン九段ペア
王九段が欠席のため、謝女流本因坊が一人で舞台に立つ。「じつは昨年も銘エン先生と組んで、一回戦で負けたんです。たぶん私のせいだったと思うんですけど、今回は足を引っ張らないようにしたいです」と謙虚に話していた。ただ、その碁が終局したとき、真っ先に王九段が「ごめんね」と謝っていて、その素直な様子が微笑ましかった。
万波奈穂二段・二十五世本因坊治勲ペア
万波二段は初出場である。「緊張しています。できればやさしい先生と組みたいと思っていました」と言うので、会場が笑いに包まれる。慌てて、「治勲先生はやさしいので」とフォローしたが、よけいに会場が沸く。それでも、「やさしい先生の顔が、私のせいで険しくならないようにしたいと思います」としっかり話を締めていたのは立派。
小山栄美六段・小林覚九段ペア
小山六段は、碁界でも代表的な紳士の小林九段と組んで安心した様子である。「女性にやさしい先生なので、のびのび打てそうです」と素直に本音が出る。「でも一回戦の相手が、鈴木さんと結城さんのペアで大変ですね」ともう気合が入っている。相手は、アジア競技大会の代表ペアだから、経験を重ねて手強いペアになっていそうだ。
桑原陽子六段・本因坊道吾ペア
本因坊道吾は山下敬吾九段が本因坊を取って名乗った号である。「ペア碁にはトラウマがありまして、打つ順番を間違えて、ペナルティのせいで半目負けになったことがあります。妻が桑原さんと仲良くさせていただいていますので、妻にしかられないようにしっかり打ちます」と本因坊は自信がなさそうである。相手の桑原六段が、「お腹に赤ちゃんがいますので、1回戦のころは三人で打つことになります」と言うと暖かい拍手が起こる。それから、「決勝のころにはもう産まれている予定ですから、正真正銘のペアになります」と明るく勝利宣言をすると、「おー」と感心して拍手が大きくなった。本因坊のトラウマも消してくれそうだ。
万波佳奈四段・山田規三生九段ペア
山田九段がくじを引いて、笑顔でマイクの前に。「万波さんと組めてうれしいです」と素直なあいさつである。「当日よろこび過ぎて、変な手を打たないようにしないと」とテンションが上がっている。会場もつられて笑っているが、うらやましいような、しっかり打ってくれよと言いたいような、ちょっと複雑な感じだった。
三村芳織二段・張栩棋聖ペア
三村二段は初出場で緊張気味。「張棋聖と組むことになって、なおさら緊張しています。でも、勝てば次に妹(向井千瑛四段)と当たるかもしれないので、頑張りたいと思います」と姉妹対決を楽しみにしているという。
穂坂繭三段・井山裕太名人ペア
井山名人が先にあいさつ。「毎年楽しみにしています。ふだんの対局は苦しみばかりですが、ペア碁はそれを忘れて楽しく打てます。出るからには一番を目指します」と、はっきり優勝宣言したのはこの人だけ。さすがである。ただ、相手の穂坂三段はそれを聞いて困った顔になる。「井山名人と組めたのはうれしいです。十年分のツキを使ってしまいました」と、もう満足している様子だった。
1回戦から準決勝までが、2010年12月11日(土)に、決勝戦が年明けの2011年1月29日(土)に、ともに市ヶ谷の日本棋院東京本院で行われる。
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