< 決勝戦 >

 「プロ棋士ペア碁選手権2011」の決勝戦が、1月29日(土)に東京の日本棋院東京本院会館で行われた。16ペアによるトーナメントを勝ち上がってきたのは、鈴木歩五段・結城聡天元ペアと謝依旻女流三冠・王銘エン九段ペアの二組である。鈴木・結城ペアは昨年のアジア競技大会の日本代表で、今大会でも優勝候補だった。謝女流三冠も中華台北代表で、王九段とは前回もペアになっており、こちらも前評判が高かった。

決勝戦会場風景 決勝戦会場風景
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< 主催者挨拶・出場棋士紹介 >

開始前の棋士。決勝戦出場ペア、鈴木・結城ペアと謝・王ペア
前列左から滝裕子公益財団法人・日本ペア碁協会常務理事・事務局長、二十四世本因坊秀芳、小川誠子六段、後列、林漢傑六段、潘坤ト初段、長島梢恵初段

滝裕子公益財団法人日本ペア碁協会常務理事・事務局長 滝裕子公益財団法人日本ペア碁協会常務理事・事務局長が挨拶した。「決勝戦には素晴らしいペア同士が勝ち上がって来られました。いい碁を見せていただけると思います。楽しみにしています」と激励して、両ペアは対局会場に移った。

決勝戦出場ペア、鈴木・結城ペアと謝・王ペア

二十四世本因坊秀芳・小川誠子六段 司会・後藤美代子
謝・王ペアに滝裕子公益財団法人日本ペア碁協会常務理事・事務局長から花束贈呈 鈴木・結城ペアに滝裕子公益財団法人日本ペア碁協会常務理事・事務局長から花束贈呈

開始前の棋士

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< 対局開始 >

謝女流三冠・王銘エン九段・鈴木歩五段・結城聡天元
謝女流三冠・王銘エン九段 鈴木歩五段・結城聡天元

〈【黒】謝依旻女流三冠・王銘エン九段ペア 対 鈴木歩五段・結城聡天元ペア【白】〉
二組ともペア碁には慣れているが、対局開始前に手番やルールの確認に真剣に耳を傾けていた。今回は、手順の間違えを防ぐために、四人の前に手順ランプが用意された。手番に合わせて自分の前のランプが点くので、安心して打てる。せっかくの決勝戦だから、トラブルが起こらないように万全を期したものである。鈴木五段が握って、謝・王ペアが先番となった。すぐ、「10秒」と秒を読まれて、慌ただしく対局が始まった。対局の周囲でファンが見学できるようになっていて、盤面はもとより、棋士の生の表情も間近に見ることができる。滅多にない嬉しい体験である。

謝女流三冠・王銘エン九段・鈴木歩五段・結城聡天元
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二十四世本因坊秀芳(石田芳夫九段)の大盤解説。聞き手は小川誠子六段 二十四世本因坊秀芳(石田芳夫九段)の大盤解説。聞き手は小川誠子六段

別室では大盤解説会も始まった。二十四世本因坊秀芳(石田芳夫九段)が解説を務め、聞き手は小川誠子六段である。石田九段が女性の対局者たちを誉めていた。鈴木五段は棋聖戦の最終予選に進出している。あと二つでリーグ入りだから、実現したらたいしたものだ。謝五段は女流三冠で、女流の中では敵なしの大活躍である。そんな強力なパートナーと組んで、男性陣は責任重大である。石田九段が、「男性の出場者は差がない。まあ、男性の方はどうでもいいですね」というので、会場が笑いに包まれた。舌鋒鋭い石田九段の解説が、会場を沸かせる。ときには毒舌も混ざるが、柔らかい小川六段の合いの手が、うまく中和してくれる。楽しい解説会だった。

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インターネットライブ中継で観戦する観客も 別室でインターネットライブ解説を担当する林漢傑七段

ペア碁は、女性の手に男性が合わせるのがコツらしい。小川六段が、「王さんは、謝さんを信じていると言ってました」と言うと、石田九段がぼそっと、「今じゃ、謝さんの方が強いかもしれない」と笑わすので会場が沸く。もちろん、みんな王九段の強さは知っているから、石田九段の冗談を楽しめるのだ。小川六段が、「ペア碁で大切だと思うことは何なんですか」と石田九段に問うと、「対局前に胃薬を飲んでおくこと」なんて答えるものだから、開始早々からにぎやかな解説会になった。

石田九段のユニークな解説に時折笑いが起こるにぎやかな会場

予想通り、先番の謝・王ペアが仕掛けて、激しい碁になった。結城天元がサバキの手筋を繰り出したが、後が続かない。結城天元は打つ手がなくて困った。「こういうのは動揺するんですよ。自分の構想と急に違ってしまうと」と石田九段がつぶやくように言う。さらに、「結城君はイスから跳び上がったんじゃないか」と余計なことを言うものだから、すかさず小川六段に、「私と組んでいたときに、石田先生が跳び上がったことがあるそうですね」と突っ込まれた。「自分では気が付かなかったんですが、後でファンの方が教えてくださったんですよ」と言われて、石田九段も苦笑いだ。

サバキに失敗した鈴木・結城ペアだったが、碁盤のど真ん中で大きなコウを挑んだのがすごい。初コウにコウなしで、コウに勝てないのは分かっているが、うまいコウ替わりがあって持ち直した。「形勢はよくないだろうが、長期戦になったね」と石田九段も感心していた。

半目差で終局 勝者は謝・王ペア

謝・王ペアが優勢の碁を、王九段の打ち過ぎで逆転したように見えた。鈴木・結城ペアには、トドメを刺すチャンスがあったようだが、無事に治まってみると、かなり細かい碁になった。「この激しい碁が最後のヨセ勝負になるとは思わなかった」と言う石田九段が得意の計算をするが、四人の打つ手が予想通りにいかなくて、何度も優劣が入れ替わる。「白がいいのかな。はっきりしない」と困っていた。ヨセで白が損して、「逆転か!」とまた数え直した。「だから最後まで分からないんだ」という石田九段がじっくり形勢判断して、「黒がちょっと残ってる。白は逆転負けですね」と断言していた。

結局、石田九段の計算がぴったり当たって、黒番の謝・王ペアが、際どく半目勝ちした。難しい碁を勝った謝は、これでようやく初優勝である。ペア碁で優勝するのは大変である。ホッとした表情の謝女流三冠の隣で、王九段がさかんに首を捻っている。なにか思い違いがあったようだ。それは後のインタビューで判明した。

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対局後の大盤解説での謝・王ペア 対局後の大盤解説での鈴木・結城ペア
プロ棋士ペア碁選手権2011

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