Pair Go RICOH CUP 2009 〜リコー杯プロ棋士ペア碁選手権2009〜
大会レポート Tournament Report
対局開始と同時にたちまち数十名のギャラリーに取り囲まれた一番人気は、やはり、謝・井山ペアvs佃・張ペアの一戦だった。なんといっても、謝女流本因坊・女流名人の「攻め」は、アマチュア囲碁ファンにはたまらない魅力だ。また、井山八段と張名人・天元・碁聖は、この秋、名人戦七番勝負で七局の死闘を繰り広げたばかり。因縁の対決でもあるのだ。


大盤解説会場では、石田芳夫九段が「張栩さんは、名人位を防衛してから、次々とタイトルをとり、今勢いがありますね。井山さんとしては、カタキをとりたいでしょう」
盤上は、ファンの期待どおり、黒番の謝・井山ペアが「攻め」る流れとなった。


加藤朋子・高尾ペアvs青木・山田ペアの一戦も、激しい戦いの碁になった。
大盤解説の石田九段は「切れるところはみんな切ってます。これは、どちらかがツブレますね。最後までいかないでしょう」


梅沢・今村ペアvs吉田・河野ペアの一戦は二番人気。
この対局の石田九段評は「黒番の梅沢・今村ペアがごくごく自然に打っています。河野君は一昨日負けて(天元戦のタイトルマッチ第3局のこと。河野九段は張名人・天元・碁聖に三連敗を喫し、天元位を明け渡してしまった)元気がないかもしれませんね」


万波・山下ペアvs小林泉美・坂井ペアの一戦は、模様対模様の様相。
石田「万波さんも、泉美ちゃんも坂井君も、模様を張るタイプではない。唯一山下さんが模様派でしょうか・・・ということは、山下さんの一人勝ち(場内笑)」実戦は、白番の泉美・坂井ペアが優勢を築き「白の打つ手は一手一手が威張っていますね」(石田)。
ところが、その後、黒が仕掛けて盤上は乱戦の「闇試合」へ突入した。


大盤解説会場では、二十四世本因坊秀芳(石田芳夫九段)の辛口コメントがひんぱんに飛び出して、ファンを盛り上げていた。聞き手の小川誠子六段も、気心の知れた、同じ木谷門下ということもあり、とりわけ、兄弟弟子の二十五世本因坊治勲(趙治勲九段)、小林光一九段には言いたい放題(?)だ。
石田「この人(小林光一九段)は、相当、相手に何もあげないというタイプですね。ものすごく欲が深くて。・・・趙さんは、昔はペア碁で全然勝てなかったんですよ。でも最近女性とのつき合い方がうまくなって(場内笑)、ペア戦も強くなりましたね」
「欲が深い」と評された鈴木・光一ペアは、岡田・彦坂直人九段ペアの石を仕留めて、見事な中押し勝ちをおさめた。


昨年の優勝ペア、大沢・趙ペアは、小山・黄ペアに中押し負けとなった。
「今年は激しい戦いの碁が多いですね。中押しで勝負がつくケースが多そう」という石田九段の予想は当たり、小西・依田ペアも、知念・小林覚ペアに中押し勝ち。加藤啓子・羽根ペアも、矢代・蘇ペアに中押し勝ちをおさめた。
梅沢・今村ペアは、序盤に築いたリードのまま攻め勝って中押し勝ち。加藤朋子・高尾ペアも乱戦を制して中押し勝ち。謝・井山ペアは、無理気味な「攻め」をモノにして逆転すると、5目半勝ちをおさめた。残る一局は、万波・山下ペアvs小林泉美・坂井ペアの一戦は、優勢だった白が踏ん張り、泉美・坂井ペアが4目半勝ちとなった。


一回戦の結果を今一度ご覧ください。



[ 一回戦の結果と棋譜のページを見るにはここをクリック→ ]

さて、再び、棋士控室を訪ねてみると・・・
矢代五段「今のは我慢して打ってた。戦わないように!」
蘇八段「ほんとに?」
矢代五段「あ〜。勝てそうな気がしたのに・・・残念だったね」
別室で大沢三段と検討を終えた二十五世本因坊治勲(趙九段)は、「ちょっと不可抗力だったね」と敗戦を振り返り、「一回戦、負けたんですか?」という声に、「まだこのあとがあるから、全然大丈夫なんだけどね」と答えていた。
加藤朋子・高尾ペアと青木・山田ペアは、4人で和やかに検討。しかし、碁盤も使わず、棋譜も見ず「切り込まれてもシビレてた」(高尾)、「上ツギが利いてるから」(山田)、「あ。そうか!」(高尾)・・・と、プロならではの「囲碁用語反省会」だ。4人には当然ながら盤面が鮮明に見えているようだ。4人で大笑いしていても、何を笑っているのやら、残念ながらわからずじまい。


もう少し敗戦ペアを追ってみると・・・
小林覚九段「次も気楽に行こうね!」
知念四段「(満面の笑みで)はい!」
吉田八段「今日は収穫がありました。河野さんはドライな青年だと思っていたら、こんなにステキな青年だということがわかりました」
河野九段「・・・まだ、終わってませんよ」(周囲の棋士たち、大笑い)
吉田八段「(慌てて)もちろんです!私は勝つ気ですよ!」
小林覚九段「う〜む・・・このペアはあなどれないな…」


一回戦に白星をあげたペアは、いずれも余裕の表情だ。
加藤啓子女流最強位に「息合ってた?」と尋ねられた鈴木四段は、当然ですという顔で「うん。去年も組んだもん」とサラリ。その隣で、依田九段は「一回勝つとね、二回目は勝つんだよ、僕は」とニコニコ顔。小西八段は「そうなんですか!?」と大きな声をあげていた。

さて、まだ二回戦が始まってもいないのだが、控室では9路盤研究会も始まった。
小林光一九段と鈴木歩四段、ここに趙九段が加わって始めたところに、次々と棋士たちが集まってきたのだ。鈴木四段の手に、「オー!」と感嘆の声をあげた趙九段は「(歩ちゃんは)芸が違うね!」。そして、ペアの光一九段に「(歩ちゃんとペアを組めるなんて)恵まれてるね〜!」。賑やかな研究会の横を通りかかった依田九段は、「あれ!せっかく和子ちゃんに教えてもらったのに、9路盤の秘策がここで流れてるのか!」と大声をあげた後、「まあ、9路盤を打たないようにすればね」と、小西八段にニ回戦勝利を約束して対局会場へ向かった。



二回戦は、一回戦の勝者ペアどうし、敗者ペアどうしがぶつかる仕組み。
組み合わせは以下のとおりだ。


 ☆ 小山栄美五段・黄翊祖七段ペア vs 小西和子八段・依田紀基九段ペア
 ☆ 大沢奈留美三段・二十五世本因坊治勲ペア vs 知念かおり四段・小林覚九段ペア
 ☆ 梅沢由香里女流棋聖・今村俊也九段ペア vs
謝依旻女流本因坊・女流名人・井山裕太八段(★)ペア
 ☆ 吉田美香八段・河野臨九段ペア vs 佃亜紀子五段・張栩名人・天元・碁聖ペア
 ☆ 加藤啓子女流最強位・羽根直樹本因坊ペア vs 加藤朋子五段・高尾紳路十段ペア
 ☆ 矢代久美子五段・蘇耀国八段(★)ペア vs 青木喜久代八段・山田規三生九段ペア
 ☆ 鈴木歩四段・小林光一九段ペア vs 小林泉美六段・坂井秀至七段ペア
 ☆ 岡田結美子六段・彦坂直人九段ペア vs 万波佳奈四段・山下敬吾棋聖・王座ペア
(★…初参加)



[ ← 前のページへ ] [ 次のページへ → ]





[ このページの一番上へ ↑ ]
開催概要 Tournament Outline 出場棋士 Players 大会結果 Tournament Results 大会レポート Tournament Report 棋譜 Game Records トップページ HOME


Copyright(C) JAPAN PAIR GO ASSOCIATION. All rights reserved.