最もギャラリーを集めていたのは、この日も謝依旻女流本因坊・女流名人＆井山八段ペア。準々決勝の相手は、加藤朋子五段＆高尾十段ペアだ。親子レポーターに「今日の意気込みは？」と問われて、「今日はね･･･珍しくガンバッチャウかもしれないよ。次に当たるのは若いペアだから、若いものにはマケナイゾっていう気持ちでね」と答えていたのは高尾十段。対する井山八段もやはり親子レポーターに「夢」を尋ねられて「今は、この大会で優勝すること」と断言して、前哨戦は互角の勝負だった。
はたして、この一局は、目の離せないすさまじい戦いの碁となった。
謝＆井山ペア優勢のまま激しい戦いに突入すると、戦いは碁盤半分に波及していき、考慮時間がいくらあっても足りないほど難しい局面に。粘り続ける加藤(朋)＆高尾ペアは、とうとう謝・井山ペアの緩着を引き出して逆転を果たしたのだ。ところが、負けを覚悟したかと思いきや、謝・井山ペアが勝負手を次々繰り出すと、加藤＆高尾ペアにまさかの失着。
二百手を越える終盤直前ぎりぎりで再び逆転劇が繰り広げられた。結果は謝・井山ペアの４目半勝ち。「本命」が勝負強さを見せつけた。
吉田＆河野ペアは、対局前、「打つたびに息が合ってきて、とてもしっくりしています！」と声を揃えて相性のよさを強調していた。対するは、加藤啓子女流最強位＆羽根本因坊ペアで、こちらは「一週間前はまるで息が合いませんでした」。ところが、この対局から、加藤(啓)＆羽根ペアが調子をつかんでいくことになったのだ。
吉田＆河野ペアが布石でリードした。さらに加藤(啓)＆羽根ペアの石を攻めに向かったとき、羽根本因坊がシノギの妙手を放つ。加藤女流最強位が局後に「感動した！」と話した一手でもある。ここから流れが少しずつ変わり、加藤(啓)＆羽根ペアの勝負手から一気に逆転！ そのまま押し切って中押し勝ちとなった。
大盤解説会場では、解説のマイケル・レドモンド九段と、聞き手の矢代久美子五段のやりとりがおおいに賑わせていた。
レドモンド「いつの間にかこの石が攻められていますね。死ぬことはないでしょうが･･･」
矢代「え〜！！とても生きているように見えませんよ！」
レドモンド「そう。では死んでるんでしょうね」（場内爆笑）
さて、親子レポーターの「ペア碁の魅力はどんなところですか？」の問いに、「自分が考えもしなかったパートナーの手で局面が拓けるとき、こういうふうに考えるんだ！と発見があること」と答えたのは梅沢由香里女流棋聖。パートナーの今村俊也九段を「優しい。絶対に怒られないという安心感の中で打てるのが大きいです（笑）」と好調の秘訣を話していた。準々決勝の相手は鈴木歩四段＆小林光一九段だ。
レドモンド九段の解説によれば「黒（梅沢＆今村ペア）が優勢を築き、少し追い上げられましたが、まだ優勢。そのまま寄せに入りました。この碁は黒が勝ちそうですね」。
しかし、その後に白が猛追。終わってみれば半目勝負。
梅沢＆今村ペアがからくも半目勝ちをおさめた。
「クジで小山さんを当てたときから運がよかった」と笑う黄翊祖七段と「もう全て翊祖君のおかげです」と話す小山栄美五段のペアは、岡田結美子六段＆彦坂直人九段ペアとの対戦。黒（岡田＆彦坂ペア）の中国流から穏やかにスタートしたが、次第に険しい様相となり、「やや黒が苦しそう」（レドモンド九段）な展開に。しかし、勝負はまだまだこれから、というときに、岡田六段が「時間つなぎのつもりでパッと打ってしまった」一手が、大失着。
あっさりと勝敗が決してしまった。
大会二日目になると、大会初日に比べて参加棋士たちの表情にも真剣さがにじんでいる。対局を終えた控室では、勝者ペアも敗者ペアも熱心に検討を続けていた。
４局の結果は以下のとおり。
小山栄美五段・黄翊祖七段ペア [ 白番中押し勝ち ]
謝依旻女流本因坊･女流名人・井山裕太八段ペア [ 白番４目半勝ち ]
加藤啓子女流最強位・羽根直樹本因坊ペア [ 白番中押し勝ち ]
梅沢由香里女流棋聖・今村俊也九段ペア[ 白番中押し勝ち ]
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