大会レポート
テクニカルミーティング
17時30分からは、参加ペアたちのテクニカルミーティングが行われ、ルールや、誤順があったときの対処法などが確認された。
これまでのルールとの変更は、「投了を確認するときも相談はなし」という点。その代わり「投了」の赤札と、「続行」の青札が手元に配られ、この札でのやりとりで意志確認をはかることになる。
質問タイムには、こんなやりとりがあった。
「わざと誤順をした場合には反則負け、とのことですが、『わざと』か『わざとではない』かは、どのように判断するのですか?」と韓国チームからの質問。
これには、大竹審判長が立ち上がった。「たしかに、わざとかどうかを判断するのは難しい。でも、紳士的でマナーにすぐれた皆さんのことですから、そのような行為はないものと信じています」
さらに、主催者から「手番くん」なる手番確認用の装置が紹介される。4名の対局者の前の小さなランプで、手番の選手の前のランプが点灯するようになっている。全対局に「手番くん」が導入され、各局につくスタッフが責任を持って操作してくれるとのこと。
「手番くん」の登場に、参加選手たちからは、感心の声があがっていた。
さあ、あとは、明日からの対局を待つのみである。
囲み取材
会場ロビーでは、報道陣のための囲み取材が行われた。
中華台北の黒嘉嘉七段・陳詩淵九段ペアは、そろって「林海峰先生が大好きです。尊敬しています」
女流棋士では? の問いに、黒七段は「謝依旻さんです! 尊敬していて、お姉さんのような存在。親友でもあります」。陳九段は「妻である張正平が、一番好き」とにっこり笑っていた。
中国の時越九段は、一回戦から韓国の強豪ペアに当たったくじ運について「全く気にしません。勝てばいつかは強い相手に当たるでしょう。平常心で普段どおりに打つだけです」と静かに闘志を見せた。
日本ペアにも抱負を聞いてみた。
村川大介八段は「世界からトップ棋士たちが来てくれたので、気合が入ります。なかなか打てない相手ですから、技術的なものも吸収したいと思います」
王景怡二段も「普段、絶対に打てないトップ棋士。対戦から学べたらと思います」
その後、一同は前夜祭会場へと移動した。
前夜祭
前夜祭も、盛大に行われた。
まずは、大会実行委員会会長、日本ペア碁協会理事長の松田昌士があいさつに立った。
「ペア碁が、こんなに素晴らしい大会になるとは思っていませんでした。滝氏が創案し、組織化し、女性も強くなり、今では世界中に相手がいます。碁といえばペア碁だと言う人もいるぐらいです。
ペア碁は、強い人と組んだからといって勝てるわけではない。たぶん、私の勝手な思いですが、女性がリードして、強い男性がついていく、というのが勝つ秘訣ではないでしょうか。
いずれにせよ、明日からの2日間、トップクラスの見事な戦いを楽しみにしています。健康に気をつけて、いい勝負を期待しています」
続いて、大会実行委員長の上條清文が登壇した。
「参加選手の皆さま、来賓の皆さまを迎え、今回の大会がこのように華やかに開催されることを嬉しく思います。ご後援、協賛いただいた各社のご支援の賜物です。事務局の皆さまにも感謝申し上げます。
私は趣味として囲碁をたしなむ者ですが、へぼなりにも、楽しく奥深い囲碁の魅力にとりつかれています。ペア碁の普及により、女性の打ち手が増え、実力も向上してきたことを嬉しく心強く思っています。滝夫妻が長きに渡り、普及・発展に情熱をそそいでこられたことに、感謝しています。
明日から、待ち望んできた世界最高峰棋士の健闘、心からお祈りいたします。また、大盤解説も楽しませていただきたいと思います。
囲碁文化を通して、国際交流と親善が深まることを祈念しております」
続いて、来賓を代表して、橋本聖子参議院議員(自由民主党2020年オリンピック・パラリンピック東京大会実施本部本部長)がご登壇、ご挨拶をいただいた。
「このたびのご盛会、お慶び申し上げ、世界からお越しいただいた皆さまを歓迎いたします。私は、スケートと自転車で7回のオリンピックを経験しております。選手時代には片方の太ももが63センチありました(会場、笑)。この夏のリオにも選手団団長として参りますが、団長などを含めますと、15回目のオリンピックとなります。
先日、滝久雄氏より、ペア碁の26年の歩みを伺い感動いたしました。
ペア碁が、日本の素晴らしい伝統・文化力を世界に発信するものと信じます。経済、芸術、文化とコラボレーションする形で、2020年を迎えたい、この伝統芸術を世界に発信するお手伝いをしたいと考えています」
国際マインドスポーツ協会事務総長・国際囲碁連盟副会長のトーマス・シャン氏のごあいさつ。
「1990年にペア碁が発案されてから、今日ここまでに成長しました。この成長ぶりは、スポーツの世界では例がないのではないでしょうか。これも滝夫妻の努力のたまものだと思います。
この26年の間に、マインドスポーツという概念は大きく発展しました。オリンピック形式を持ったマインドスポーツイベントもたくさんの国や地域で行われました。その中で、「ペア碁」は重要な位置を占め、マインドスポーツに貢献しています。鮮やかさがあり、面白く、男女が平等です。今後も マインドスポーツを促進するうえで、ますますペア碁は不可欠のものになってくると思います。
興味深いこの大会を運営してくださった皆さまに感謝しています。
選手の皆さんには、面白い独創性のある碁を期待しています」
そして、乾杯のご発声をされたのは、中国囲棋協会副主席の聶衛平氏。
「ペア碁が歴史を重ね、ここまで大きくなったのはすごいことです。3カ国から強い棋士が参加しており、それだけ影響力のある大会だと思います。個人的には、滝夫妻に感謝しています。これだけ囲碁にご尽力くださり、ありがとうございます。さきほど、橋本先生は15回オリンピックに参加されたと話されました。2020年の東京大会では、ペア碁を公開競技のような形で実施できないでしょうか。これを推進していただきたい。中国としては応援しますので、ぜひお願いいたします。
ペア碁の選手の皆さんには、幸運を祈ります。全力を出し切ってがんばってください。乾杯!」
その後は、会場中が、和やかな談笑タイムとなった。
途中設けられた「"パンダ先生"チャンレンジマッチ」に出題された詰碁の解説タイムでは、出題棋士たちが次々と自慢の問題の解答図を紹介していった。
河野臨九段は「このような世界のトップ棋士が集まる晴れの舞台で、詰碁を取り上げていただき嬉しかったです。中途半端なものは作れないぞと、気合を入れて問題をつくりました。詰碁を作るのは好きです。この企画が盛り上がる助けになれていたら、とても嬉しく思います」とあいさつした後、「アルファ碁」が打った形をアレンジしたという問題の解説に移った。
続けて、「"パンダ先生"チャンレンジマッチ」の表彰式。
優勝の"パンダ先生"ペアと、2位の呉・崔ペア、3位の於・柯九段ペアに、それぞれ賞金目録が渡された。
そして、詰碁出題棋士にも、最優秀作品賞が大場惇也七段に、優秀作品賞が河野臨九段に、それぞれ贈られた。
その後は、アトラクションステージが展開。
「歌舞伎連獅子」のパフォーマンスや、サプライズイベント、ペア碁の歌の披露など、賑やかな時間が過ぎ、会場は暖かい空気に満ちていった。
滝裕子実行委員が中締めのあいさつに立った。
「スポンサーの皆さまはじめ、本当に皆さまありがとうございます。明日から夢のような2日間です。明日、明後日、心ゆくまで、ペア碁を楽しんでいただけますように」
滝裕子実行委員の言葉どおり、まさに「夢のような2日間」が幕を開ける。