2016年2月6日(土) 2回戦~懇親会
2回戦
謝依旻女流本因坊・二十五世本因坊治勲ペア vs 吉原由香里六段・柳時熏九段ペア
1回戦に勝って勢いに乗る謝・治勲ペアが、気持ちよく2回戦も突破して準決勝に進出した。検討でも治勲の笑顔が弾ける。一人で打っているときの厳しい表情とはだいぶ違う。謝女流本因坊の実力はだれもが承知している。負けても彼女のせいじゃない、そんな雰囲気が漂っているのは、二十五世本因坊治勲にとってもプレッシャーなのだろう。勝つたびに、表情が緩んでホッとした様子である。
王景怡会津病院杯・村川大介八段ペア vs 小西和子八段・依田紀基九段ペア
小西・依田ペアが優勢と思われたが、二人の呼吸が乱れて逆転されてしまった。王・村川ペアは終盤も安定していて、だんだん呼吸も合ってきた。波に乗って来た印象である。
向井千瑛五段・一力遼七段ペア vs 奥田あや三段・高尾紳路九段ペア
世界で流行の最先端の変化が現れて、盤上は緊張、タイトル戦のような雰囲気である。1回戦で敗退した井山棋聖と張栩九段が解説会に登場して、流行の変化はどちらがいいのかと検討していた。向井・一力ペアが若い力を発揮して、本命の一つと思われた奥田・高尾ペアを下した。
加藤啓子六段・山下敬吾九段ペア vs 鈴木歩七段・河野臨九段ペア
加藤六段・山下九段ペアが、手厚い山下流の碁で快勝している。ペア碁に強い鈴木七段と河野九段だったが、この碁はうまくいかなかった。山下九段の気合に押し切られたような展開だった。
準決勝戦
王景怡会津中央病院杯・村川大介八段ペア vs 謝依旻女流本因坊・二十五世本因坊治勲ペア
王・村川ペアが勝って決勝に進出している。王会津中央病院杯は、「父(王立誠九段)がペア碁に参加しているのを子どものころに見に来ていたのですが、自分がこの舞台で打っているのが信じられない気持ちです」とうれしそうだった。村川八段は、「難しい局面で王さんがいい手を打ってくれました」とパートナーを持ち上げた。
向井千瑛五段・一力遼七段ペア vs 加藤啓子六段・山下敬吾九段ペア
加藤・山下ペアが優勢と思われたが、次第に雲行きが怪しくなってきた。「闇試合」の声が上がるほど混沌とした状況で、終盤になってついて向井・一力ペアが引っくり返してしまった。解説の二十四世本因坊秀芳が思わず、「この碁を負けちゃうの?」と呆れるほどの逆転劇だった。
懇親会にて
松田昌士日本ペア碁協会理事長があいさつ。「ペア碁は女性に男性がついていけば勝てるようです(笑)。これからもペア碁を盛り上げていきましょう」と言って、参加棋士たちを労っていた。
滝久雄日本ペア碁協会顧問・評議員と滝裕子日本ペア碁協会常務理事に大倉喜七郎賞が贈られたことが報告された。
滝顧問・評議員「この賞は特別なものがあります。うれしいです。ありがとうございます。日本の棋士には世界で勝ってもらい、ますますファンを増やしたいと思います」
滝常務理事「夢のような賞をいただきました。ペア碁を通して囲碁の普及に尽くしていきたいです」
解説の二十四世本因坊秀芳が戦いを振り返った。「決勝に進出したのは、私の予想では候補に入っていなかった(笑)。一力七段はまだ18歳で、ペア碁が始まったときにはまだ生まれていなかった。4人とも若くて、新鮮な組み合わせになりました」
決勝進出の2ペア
一力七段はマイクを向けられて、「準決勝は投了しようかと思うほど悪くしました。諦めずに打っていたら運よく勝てました」と振り返っていた。
ペアを組む向井五段は、「一力さんを信じて、決勝でもがんばります」と決意を語った。
王会津中央病院杯は、「3局とも苦しい碁でしたが、よく勝てました。決勝でも運を味方に打ちたいです」と明るい。
村川八段は、「打っているときは悪いとは思っていませんでした。後からみんなに『苦しかったね』と言われてようやく気が付きました(笑)。ここまで来たら次も勝ちたい」と優勝を宣言していた。
準決勝で敗れたものの活躍した二十五世本因坊治勲は、「私は優勝から遠ざかっています(笑)。謝さんについて行こうと思ったのですが、私が変なところで考慮時間を使い果たして、謝さんに迷惑をかけてしまいました。わたしがすべて悪いのです」と言って、謝り倒していた。謝女流本因坊に、「そんなことないですよ。勉強になりました」と慰められると、かえってつらそうに頭を抱えてしまった。
余正麒七段は初参加である。「いい経験をさせていただきました。来年も出られるようにがんばります」と爽やかにあいさつ。余七段とペアを組んだ青葉かおり四段は、「相手が奥田・高尾ペアで強かった。余さんの考えを読めなくて、うまくいきませんでした。一瞬、勝てるかと思った場面もあったのですが、届きませんでした」と残念そうだった。
解説でも活躍した張栩九段は、「負けたら自分の責任。解説に回るのは当然です」とにこやかにあいさつ。
張九段とペアを組んだ万波奈穂三段は、「張栩先生は優しかったです」と感謝の言葉を述べていたが、「今までペアを組んで一番怖かったのは治勲先生(笑)」と言うものだから、当の治勲がまた落ち込んだ表情になった。それでも、まんざら嫌そうでもないようにも見えた。
解説を一緒にやった吉田美香八段と結城聡九段。吉田八段は、「結城さん今日は元気がないわね。なに考えてたの(笑)」と話しを振る。ようやく結城九段がマイクを持った。「碁の悩みです。どうやって勝てばいいのか」と本気で答えているようだ。「ペア碁は謝さんと王銘琬九段ペアに、決勝で2回とも半目負けで優勝させているんです」とずいぶん前の話をまだ引きずっているようだ。自分が優勝したこともあるのだが、あまりに昔のことで忘れているのかもしれない。どんなときでも真面目な、結城九段らしい一幕である。