謝依旻女流名人・女流棋聖・小林覚九段ペア vs
矢代久美子六段・井山裕太井山裕太棋聖・名人・本因坊・天元・王座・碁聖(六冠)ペア
謝・小林ペアの呼吸が乱れて、中盤で思わぬ苦戦に陥った。石田九段が、「ものすごく損した」と悲観的な見方をしていたが、大本命ペアが敗れる波乱となった。「わたしのせいです」と落ち込む謝女流名人・女流棋聖を、「僕が悪い手を打ったせいだよ」と小林九段がかばっていた。碁盤を離れてからも、二人で勝負所を振り返っていたが、こういう姿勢が謝女流名人・女流棋聖の強さを支えているのだろう。
矢代・井山ペアが、「無欲」の勝利で準決勝進出である。「矢代さんのおかげです」と井山六冠が元気になってきた。
青木喜久代八段・羽根直樹九段ペア vs 小山栄美六段・山下敬吾九段ペア
「羽根さんはペア碁も強い。青木さんも好調」と解説陣が押していた通り、二人が快進撃で準決勝に進出している。山下九段は棋聖戦で挑戦中である。二人で打つ碁は、調子が出なかったのかもしれない。
知念かおり四段・瀬戸大樹七段ペア vs 王景怡二段・山城宏九段ペア
勝負所で王・山城ペアの呼吸が乱れて、二人の打つ手がチグハグになった。王二段がいっぱいに頑張るのを、山城九段が方向修正したのがまずかったようだ。「僕が悪かった」と頭を掻いていた。
知念・瀬戸ペアが準決勝進出である。
向井千瑛女流本因坊・結城聡十段ペア vs 加藤啓子六段・小林光一九段ペア
17回と18回大会で、「二年連続、決勝で半目負けした」という結城十段が、リベンジに燃えている。勢いに乗る向井・結城ペアが絶好調で、加藤・小林ペアを退けて準決勝進出。加藤・小林ペアにとっては、相手が悪かったようだ。
矢代久美子六段・井山裕太六冠ペア vs 青木喜久代八段・羽根直樹九段ペア
中盤で大きなコウになったが、そのコウをほったらかしのままで進行する珍しい展開となった。「どうするんでしょうね」と石田九段も戸惑っていた。青木・羽根ペアがタイミングを見てコウを再開したが、結局、矢代・井山ペアがうまく立ち回って快勝している。井山六冠は、「気が晴れました。十段戦の挑戦権は逃しましたが、こっちで優勝します」とご機嫌だった。矢代六段は、「私は隣に座っていただけです」と謙遜するが、井山六冠によるとそうでもなかったようだ。「2回戦の中盤で間違えそうになったときに、手をひっぱたかれました」と言うから一堂爆笑である。もちろん冗談である。
知念かおり四段・瀬戸大樹七段ペア vs 向井千瑛女流本因坊・結城聡十段ペア
中盤で知念・瀬戸ペアに大きな模様が出来て優勢になった。模様を囲えば勝ちと思われたが、タイミングを失って、相手に先着されて荒らされた。まさかの逆転負けで、もったいない碁を落とした。模様を囲う決断が出来なかった瀬戸七段は、「申し訳ないことをしました」と恐縮しきりだが、「ここまで来れたのは瀬戸さんのおかげです」と知念四段が優しく慰めていた。
参加した棋士たちが集まって、懇親会が催された。
大会会長の松田昌士日本ペア碁協会理事長が、「おもしろい碁をたくさん見せていただきました。ペア碁は楽しいですね。ファンの方たちも朝から夢中になって喜んでいました」と棋士たちを労った。
決勝に進出したペアにマイクが向けられた。
向井女流本因坊が、「決勝に残れるとは思っていませんでした」と素直な感想を述べると、石田九段が、「結城さんは自分たちが本命だと言っていたよ」と冷やかした。
その結城十段は、「正直なところ、井山さんのペアが出て来るとは思ってなかった」と言って笑わせたが、これは本音かもしれない。十段戦の挑戦者にはならなかったが、こっちで当たることになったのでびっくりしたのだろう。
井山六冠が矢代六段とペアを組んだ感想を聞かれて、「矢代さんには助けられました。決勝では何度でもひっぱたいてください」と笑わせていたが、なんだか冗談でもないような気がしてきた。
石田九段が、「ベテランの光一さんが頑張ってると評判でしたよ」と話しを向けると、小林名誉三冠は、「20回全部出していただいているんです。娘の泉美ともペアを組んで優勝していますし、感慨深いものがあります」と振り返っていた。
一番盛り上がったのが、結婚が決まったばかりの瀬戸大樹七段に話しが向けられたときだった。お相手は囲碁もたしなむそうで、二人で打つこともあるという。いつもにこやかな瀬戸七段だが、のろけ話が楽しそうなこと。みんなに祝福されて、さっき負けたこともどこかに吹き飛んだようだった。お幸せに。
決勝戦の模様は、3月28日(金)に「囲碁将棋チャンネル」にて放映される。
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